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北野ふゆ子
  • 北野ふゆ子
  • 昔は、ゲームやマンガの二次創作をしておりました。現在は主にオリジナルネット小説を執筆しています。得意は「シリアス」「アクション」「サスペンス」です。



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押印師 ACT2-2
02

 中央に近づくにつれ、石畳のきめが細かくなってくる。立ち並ぶ建設物の高さや横幅が増し、軍部施設が多く立ち並び始めて、華やかながら厳粛な空気が色濃くなっていくようだ。
 路地裏から大通りに出くわしたところで、エルリオは時計塔を見上げた。もう昼間近の時刻。最も市場が混雑する時間は、正午前後の一時間と、夕方の閉店前の一時間。エルリオはこれらの時間を狙って市場に出向く事にしていた。徐々に多くなる人波をかいくぐりながら進む。
「エル」
 キューがエルリオの耳元にささやく。声に、何かを訝しむ色が滲んでいた。
「いつもより兵の数が多い。通常の1.3倍」
「…………」
 言われてエルリオは改めて周囲に目を配った。人の列を潜り抜けて、ハート・オブ・アリタスのロータリーが見渡せる一角に出る。
 確かに、町中を巡回する国軍服の姿が、いつもより目立つような気がした。
「巡回じゃない。ルートを外れた動きをしている。制服も違う」
 キューの言葉は正しく、多くが不規則な動きを見せていた。真っ直ぐに正面を向いて、儀式的とも言える動きのみを繰り返す巡回警備兵や門衛とは違う。かといって、軍の中の、統治権に基づいて秩序障害を除去するために国民に命令・S強制する機関、すなわち警察局の人間とも違うようだ。
「………」
 兵の動きを横目で警戒しながら、エルリオは馴染みの露天商人のもとに駆け寄る。
「こんにちは、おばさん」
「おや、エルちゃん」
 市場で唯一の薬商露天をかまえる初老の女は、馴染み客のエルリオを見とめて破顔する。だがすぐに眉間を潜めて、兵の動きを気にしながら小声で言葉を続けた。
「今日は早くお帰りよ、なんだか物騒だからね」
「何かあったのですか?」
 市場の人間は、市井の情報源だ。時に軍の機密でさえ、噂レベルではあるが密やかに彼らの耳に届く事もある。ここに買い物に来れば、世情の動きはだいたい把握できた。
 エルリオが市場に足を運ぶ第一の目的だった。
「何でも、敵国の戦争捕虜が逃げ出したとかいう噂だよ」
「戦争捕虜?アリタス国内で?」
 エルリオ自身の記憶には無いが、記録により得た知識によればアリタスはつい十三年前に、隣国のライザ帝国との戦いを収束させたばかり。
 ライザは皇帝一族を頂点とする絶対君主制の大国。世界三大連峰の一つ、ゴルタ連峰を挟んでアリタスの北西に位置している。両国は、国境付近の鉱脈地帯の権利を巡り不仲だった。
 にらみ合いが続く中、帝国内で皇帝派とレジスタンス組織による内紛が勃発。レジスタンス組織「ライザ民政軍」は鉱脈地帯の権利譲渡を条件に、アリタス軍に援軍を求めたのだ。帝国からの威嚇行動に業を煮やしていたアリタスは、それを承諾。それが約十五年前の出来事。
 十年は続くであろうと予測されていた戦は、わずか二年で終結した。勝利の精霊は、ライザの民主化を進める民政軍と、アリタスの連合軍に手を差し伸べたのだ。
「あぁ、皇帝派の捕虜の一部をアリタスで預かっているらしいんだよ。あれから十三年経つが、まだ戦争裁判は終わってないと見えるねぇ」
 だが少なくとも皇帝一家の処分は終戦直後に下されたはずだ。当然、処刑という扱いで。それに続く形で幹部も一通り粛清されたはず。
「ふぅん、よくわからないけど…」とエルリオは知らない振りをした。
「おばさん、火傷に効く軟膏ある?」
 エルリオの注文に「あいよ」と軽快に答えて女主人は展示棚を探り始める。
 軟膏を受け取り、店を後にしたエルリオはその足で、次に食料の買出しに向かう。薬屋とは対極の方向にある青果露店を目指して、歩き出した。
「エル、あれ」
 肩に乗るキューのつぶやきが聞こえる。市場の喧騒に紛れ、この小さな声を聞く者はエルリオ以外にはいない。
 ロータリー脇に設置された、駅の交通案内板を見る。並列された掲示板は、駅職員が交通情報や工事情報などを報せるために使われている。そこで今まさしく掲示されたばかりの情報があった。
 ハート・オブ・アリタスから四方八方にのびるメインストリートの全てに、臨時検問所が設けられたという。完全封鎖されたルートもあるようだ。
「穏やかでない空気だな」
 エルリオの後方から掲示物を眺めていた中年の男二人組が、肩を竦めて顔を見合わせた。顔に見覚えがある。すぐ傍で露店を構える店主たちのようだ。掲示板を見上げる素振りで、エルリオは背後に聞き耳を立てる。
「軍はよっぽど大物に逃げられたんだろうな」
「雑魚を預かるとしたら郊外の収容所になるんだろうが、ACCから逃げ出したとなればなぁ」
「しかし、もう帝国の構成要員は全て粛清されたって、聞いたが」
「ディノサス共和国の動きが怪しいっていう話も聞く。あそこはライザと地続きだろ?一部の華族がライザ皇族と血縁のつながりがあるとか」
「なんだ、ライザの次はディノサスか?大国との戦争はしばらく勘弁してほしいな」
「イーザー将軍が健在なら、心配はないだろう。ACCにまで戦火が及ぶ事はない」
 イーザー将軍とは、先のライザ帝国軍との戦いで名を馳せたアリタス国軍将官の一人だ。
「そういえば最近、公に聞かなくなったようだが」
「だけど終戦当時でまだ若かったはずだ。まさか退役はあるまいて」
「そうだな、総統もまだまだ若い。何とかなるといいがな」
 大袈裟に肩を竦めて苦笑を投げつつ、店主二人はロータリー前から去っていった。
 ちなみに総統はアリタスを統べる元首の称。現在の総統は第三十七代目。名をフューリーと言う。
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よし、さっそく始めるか。前回は、外見、いわゆる見た目に少し触れたな。確かに、恋愛において第一印象は大事だ。俺の息子(陰茎)も、ブスと美人では硬さに違いがでる。これは、否めないことだ。
マグナム熊切 【2006/06/20】

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