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北野ふゆ子
  • 北野ふゆ子
  • 昔は、ゲームやマンガの二次創作をしておりました。現在は主にオリジナルネット小説を執筆しています。得意は「シリアス」「アクション」「サスペンス」です。



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押印師ACT8-9
09

(ミリアムに戻った…)
 ミリアム「が」戻ったというべきか。
 いずれにしても構わない。エルリオは現状に安堵した。安堵してようやく、
(リューシェって誰だったんだろう)
 と思案すべき疑問が思い浮かぶ。ミリアムの反応を見るに、一連の出来事を本人は覚えていないようだ。
「『リューシェ』は愛称だね」
 呼応するようにミリアムの足元から声がした。キューだ。そういえばミリアムがリューシェに変わった頃あたりから姿が見えなかった。「初対面の人間の前には決して出ない」という約束を守っていたという事か。キューも同じように、これまでのミリアムから読み取ってきた口調、言葉や表情からリューシェが別人と判断したのだろう。
「愛称?」
「子どもの名前辞典 第三十五版 の三百二ページ目」
(そんな本があったんだ…)
 自宅に所蔵していた本を片っ端から記憶させていた為、時にエルリオにも把握していない記録をキューは持っている場合が多い。もしかしたら両親が自分の名前を一生懸命考えてくれていたのかもしれない、と胸が熱くなりそうなのをエルリオは堪えていた。
「ただ、これが「リウシアル」とうい名の愛称か、「リオネルシエラ」という名の愛称かで、だいぶ意味が変わってくる」
「どういう事?」
「「リウシアル」はアリタス、「リオネルシエラ」はライザ帝国よりの名前だから」
 名乗る直前に詰まらせた言葉をさりげなく流していた、リューシェの仕草が思い出された。巧みにぼやかされたのであるならば、有力な手がかりとは言えなかった。
「リュー…シェ?」
 キューの声に、ミリアムから反応があった。
「何故…エルリオさんがその名前を…?」
「えーっと…」
 困ったときに見せる顔で覗き込んでくるミリアムの視線から逃げて、エルリオはキューやヴィル、ジャスミン達に助けを求めるように瞳を泳がせた。咄嗟に、ミリアムに説明すべき言葉が見つからなかったからだ。
「その「リューシェ」って、だぁれ?」
 砂地の上に座り込む少女達の間にやってきたのはジャスミンだった。二人の少女達と輪を作る形で膝を曲げ、首を傾げて微笑みミリアムに顔を向ける事で自然と問いをエルリオから逃がした。
(助かった…)
 心の中でジャスミンに手を合わせて礼を言う。
「わ、分かりません…はっきりとは…」
 常に人の瞳を真っ直ぐに見つめてくるミリアムが、珍しく俯きながら不明瞭な声で口ごもる。
「…ずっと、グレンの心の中にいた人…で」
「心の中に?」
「恐らく、グレンがいちばん大切に想っている人…だと」
 ここで言う「心の中にいる人」は、さきほどのミリアムのような状態の事ではないようだ。言葉の通り、想い人の存在を読心したのだろう。軽く下唇を噛んで視線を斜めに落としているミリアムが、リューシェという名の存在に嫉妬しているのはエルリオの目にも明らかだった。
(―ミリアムはグレンて人の事が好き、って事なのかな……)
 だが娘が父親に向ける感情と、ミリアムが保護者代わりの人間に向ける感情の違いがエルリオには判別しえない。それでも自分の身近にいる唯一の拠り所、その尊さは理解できた。
 それにしても―
(あの高飛車女の事が好き……ねぇ…)
 今のミリアムと対極位置にいるようなリューシェを思い出して、いまいちグレンという人間について理解に苦しむとエルリオは首を傾げる。だがそんな事より重要なのは、「リューシェ」が誰であるのかだ。多重人格という単語は知っている。性格どころか仕草や顔つきまで変わるものらしい。だがミリアムの場合、一つの体の中に形成された二つの目の人格、それだけでは説明できないように思えた。
 ミリアムは明らかにあの印に反応し、リューシェが表出したのだから。
(でも何で?ピルケースから取り出した紙に書かれた印には何も…)
 出会った時の事を思い出す。ピルケースに入れて長い間持ち歩いていても異変が無かったのであれば、印自体に無条件に反応を見せるという事ではなさそうだ。何かしらの条件が合致したのだろう。
(条件……地面に描かれていたから?それともサイズ?場所?)
 足元で半分消えている印を見つめてエルリオは口を噤んで思案していた。
「あれ?」
 地面の印を見つめているうち、エルリオは落とした視界の中に違和感を見出した。
 砂の上に座り込むミリアムの白く細い足が目に入る。座り込み折り曲げる事で露出している脛、ミリアムが天啓印を宿している部位だった。
「ちょっと、ごめん」
 慌てて側の携行ランプを手繰り寄せてミリアムの脚に近づける。動きに合わせてキューも近寄ってきた。不思議そうな顔をするミリアムも、ランプに照らされた自分の脛をみて「あ…」と声を漏らした。
「どうしたんだ」
 少し離れた場所からヴィルの声。気を遣っているのか、近寄ってこようとしない。かわりにジャスミンが上から覗き込んできた。
 エルリオが照らす携行ランプの明かりの中で、ミリアムの白い脛が見える。そこに、拡散した赤紫の痕があった。怪我だろうかとジャスミンは目を凝らす。
「すりむいたの?」
 声をかけてみるが、明確な反応が戻ってこなかった。
「消えかけているね」
 数秒の間の後、帰ってきたのはキューの言葉だった。指摘通り、ミリアムの足にあった勾玉模様を描いていた印は色あせて、肌の色に沈み込もうとしている。もともと、ライザに受け継がれる古い印にしては模様が単純で曖昧であったと疑問に感じていたのだが、今はジャスミンの目にそう見えるように、まるで治癒しかけた傷のようだった。
「え…何故…」
 ミリアムは困惑の声を洩らす。心を読み取る力はむしろ増しているというのに。
(これもさっきの現象と関係しているの…?)
 年若いがエルリオは事実上、幼少の頃から父の側で十年数年間「印」に関わってきたが、これまでの経験において他例の無い事象がいま、立て続けに起きている。
「うーん………もうさっぱり…」
 文字通り頭を抱えてエルリオは首を振った。その時、
「ご当主、こちらでしたか」
 背後から男の声がかかった。一斉に振り返ると、そこには竜騎士の一人が。
「来て頂けますか、先ほどの地震の事で…」
「今いく」
 眉根を顰めて駆け出していくヴィル。その一方でミリアムは「じしん?」と首を傾げていたが、エルリオはその手を引いてジャスミンと共にヴィルの後を追った。
 幾つかの段差を越えて辿り付いた場所は、隣の谷へと繋がる大吊り橋が掛けられた絶壁の前。エルリオ達が昼間に見た場所とは違い、釣り橋手前が広場になっており高台の役割も果たしていた。障害物がなく谷全体がよく見渡せる。
 現われた当主の姿に人だかりが道を開けて割れる。中央に残った側近らしき男がヴィルを手招きする。男が示す先、釣り橋を見やった。
「橋が…」
 背後から覗き込むエルリオが夜目に目を凝らすと、口を開けた空間に対岸へと吊るされた橋が大きな弛みを生じさせているのが分かる。これでは渡れない。橋のワイヤーを巻きつける支柱に問題はない。ワイヤーが伸びきっている様子でもない。ただ、中空に伸びる吊橋だけが不自然に大きく弛んでいる。
「絶壁の断層を見てみるか」
 ヴィルは風を起こそうと右手を上げた。
「?」
 違和感はすぐに分かった。
 常ならば右手の動きに合わせ空気が渦を巻き、体中を風が纏うのだが、感覚が違った。まるで寝床から這い出てきたように重たく湿った風がずしりと圧し掛かってくる感覚。
「どうしたのですか?」
 とジャスミン。その横からエルリオとミリアムも、己の右手を不思議送に眺めるヴィルを覗き込んできた。
 まったく―、この娘らと出会ってからというもの、様々な事象に遭遇する。
「風が異常だ。これでは危なくて飛べない」
「騎竜の様子もおかしいのです。動きが重たい。風を上手く読めていないようです」
「シュテラリオン」
 部下の言葉に風を呼ぶ事を諦め、ヴィルは再び右手を空に向け、竜王の名を呼んだ。竜の王は、己が当主と決めた人間の声にのみ応える。ヴィルの声とほぼ同時に空気がざわめき、風となって渦を作り始めるが、やはりぎこちなく重たかった。そのうち、巨大で緩慢な翼音が空から降りてくる。
「どうしたんだ」
『風が迷走している』
 気だるげな言葉と共に巨大な竜影が舞い降りた。みるみる近づく巨体。その場に集っていた人々は水辺に滴が波紋を広げるようにその場から下がった。大きく空けられたヴィルの傍らに竜王はその巨体を収める。
『精霊の姿を見失い、風が己を失っているようだ』
「治るのか?」
『刻の経過と共に収まるだろう。一時的に力を失っているだけのこと』
「そうか…」
 ヴィルの安堵と共に周囲も表情を緩めていく。だがヴィルはすぐに面持ちを戻すとシュテラリオンを見上げた。
「地竜らは大丈夫だろうか?」
 地竜谷の竜達は大地と心身を通じ合わせ、時に土や岩に潜む。地竜谷の王は、底深き谷の大地の下に眠っているという。シュテラリオンは長い首を空に向けると暗闇が広がる夜の渓谷を見渡した。
『問題ないようだ。そのうちまた風が戻り地や水も落ち着くだろう』
 シュテラリオンの言葉の直後、穏やかな微風が人々の額を通り過ぎていった。
「風が戻りましたね」
「ああ」
 再びヴィルは右手を差し延ばし、風を呼んだ。生気のある風が渦を巻き、足下からも吹き上げる。確かに元に戻っていた。
「ランプを貸してくれ」
 携行ランプを手にしていたエルリオにヴィルの手が伸ばされる。
「は、はい」
 慌てて駆け寄ってランプを渡した。「またお前が何かやったのか」と言いたげな人々の視線が痛い。ヴィルは絶壁から飛び降り、釣り橋がかかる岸壁の断層の前に身を浮かせた。竜翼谷の切り立った岩山は、風が運んだ砂が集まり積もり、水が固める、これを天文学的年数を重ねて繰り返した結果そびえ立つ天然の塔となっている。そのために断層は滑らかな均等の横線を描いており、火山地帯に見られる物とは表情が異なっている。
 ランプを前方に翳しながらヴィルは少しずつ断層から距離をとる。夜目に目を凝らすと、徐々に慣れた目が光景をとらえだした。
(特に問題はなさそうだが…)
 滑らかな断層に変化はなかった。
「いかがですかー?」
 頭上からジャスミンの声。隣からエルリオとミリアムの顔も見えた。
「娘、一緒に来い」
 ヴィルが上空にそう呼びかける。呼ばれてエルリオは「え!」と目を丸くした。
「ど、どうやってそこに行けば?」
「押印を使えばいいだろう」
「でも…」
 昼間の出来事が鮮明に記憶に甦り、エルリオは肩を萎めた。ヴィルはすぐに心境を察した。
「竜達は学習する。今度は平気だ。」
「本当?」
 エルリオはすぐ側に身を置く竜王の巨大な瞳を一瞥する。長い首がゆらりともたげられてエルリオを見やった。たったこれだけの動きだがとてつもない迫力だ。遠くでは見ることができなかったが、鱗の一つ一つが鋼板のような鋭さと輝きをもっている事も分かる。
『ヴィルの言うとおりだ。』
 頭の中に直接響いてくるような低音が、人の声を発した。
『当主が自ら「危険がない」と宣誓したのだ。竜はその言葉を信じる他ない』
「信じる他…ない」
 人とも獣とも生地を別つ事を決めた、神と精霊に最も近い存在とされる神妖獣が、人間の言葉にこうも忠実に従う―、エルリオはその事実に改めて感嘆を憶えていた。
「じゃぁ…行って来る」
 おずおずと立ち上がり、「いってらっしゃい」と見送るミリアムに手を振られる中、エルリオは絶壁の縁に足をかけた。そのまま準備なしに飛び降りる。
「あっ」
 ジャスミンを始め周囲の人間が思わず声をあげる。落下しながらエルリオは自らに押印を発動させた。月光の粒子が羽の形をかたどり、エルリオの背中から生み出される。幾度かの羽ばたきと共に少女の体が曲線を描いて中空に浮かび上がった。軽いどよめきが上がる。
「何度見ても心臓に悪いわ…」
 ミリアムの隣でジャスミンが溜息を洩らしていた。
「断層を見てみろ」
 視線を断層に向けたままヴィルは高度を落とした。
「う、うん」
 エルリオもヴィルと共に、徐々に下方に向かいながら断面を上から眺めていった。
 断層は滑らかな線を描き、生地を重ねたケーキのようだ。それは最下に降りるまで変わることはなく、まるで人工のように整然としている。
「地層に地震の影響はなかったみたい?」
「どうやらそのようだ」
 落石の様子もない。最下に降り立ち、ついでに辺りを見渡す。空を見上げて、岩壁の尖端からしな垂れた弓の弦のようにぶらさがる吊橋を目で追い、エルリオは呟いた。
「動いたから橋が弛んだのかな…」
「動いた?」
 エルリオは両手の人差し指を立てて左右に離し、それぞれを対岸に設置された支柱に見立てる。
「あれだけ橋が緩んでるって事は、」
 言いながら、少しだけ左右の指の距離を縮めた。
「単純に考えてかなり距離が縮まったって事じゃないかな」
「この岩壁が移動したと?」
 「うん」と事も無げに頷くエルリオ。ヴィルは表情を変えずに頭上に聳え立つ岩壁を見上げた。確かに地層がずれて上部が弓なりに反れているのなら分かるが、岩壁は垂直を保っていた。
「まさかあの程度の震動で…」
 足下の土にも触れてみた。ここは上層と異なり土が湿っている。竜の澱の入り江が近くにあるからだ。もしやと思いヴィルは入り江に走る。エルリオも印を消して後に続いた。少しずつ足下の草が丈を増し、ヴィルの腰を越える頃、目の前に青い入り江が広がるようになる。
 入り江の中心では気泡を吐き出す音をたてて竜の澱が地下から湧き上がり、地竜谷とを遮る巨大な酸の河へと繋がっている。もしや今の地震でこの入り江が溢れているのではと危惧していたのだが、その様子はなかった。
「この辺りまでは影響がない…か」
 独言を呟いて踵を返そうとすると、
「ご当主」
 上から声がかかった。
 見上げると、騎竜が上空に姿を現しそこに騎乗していた男が一人、軽い身のこなしで目の前に着地する。ヴィルが手にしていたランプをかざすと、そこにはこげ茶の髪―若い地竜谷の竜騎士がいた。
「向こう岸から、ここに降りられるのが見えたものですから」
 男が一礼するのに応えてヴィルも頷く。エルリオも遠慮がちにヴィルの背後から会釈した。茶色い髪の竜騎士は特に訝しがる様子を見せずエルリオに視線をやり、そしてまたヴィルに戻した。
「地竜谷に何か変化や影響は?」
「いえ。震動音を微かに感じる事ができましたが、揺れはほとんどありませんでした。竜達も今は落ち着いています。我々にも特に影響は。」
「対岸の橋の支柱はどうだ、倒れているのか?」
「え、いいえ。ワイヤーにも異常はなく。」
 だが男にも橋の弛みが気になるようで、ちらりと黒い瞳が上空を一瞥していた。
「そう、か」
「ですが、こちらを」
 男は入り江を指差す。答えを口にする前に水辺に歩み寄り、腰を屈めて片手を竜の澱に浸した。
「…?」
 ヴィルは目を細める。
 竜の澱は谷の人間にも容赦なく酸の溶解力を発揮する。
 場所により酸の強さは異なるが、この河は元々三つの谷をそれぞれに隔絶させる為に流れているといわれ、太古の時代、澱は現在と比較にならないほどの強い酸性をもって人々の相互往来を拒絶していたという。小動物であれば溶けて骨だけになるのに一分とかからなかったという伝説も残っており、今もなお、長時間浸せば軽い炎症程度の火傷を負わせる威力をもっている。
 だが今、目の前の若い竜騎士は手袋はずした素手を水に浸して幾度と水辺を掻き混ぜるが、熱がる様子がないのだ。
「ご覧の通りです」
 水から手を出し、ヴィルに手の平を返して差しのばす。ここの水辺は外への入り口から伸びる澱に比べて原水に近いために酸が強いはず。
 なのに火傷らしき痕が一つとして残っていなかった。
「………」
 まさかと脳裏で呟きヴィルも水辺に歩み寄り、水中へと手を伸ばした。もどかしい思考を置き去りにして一気に手首まで浸す。
「水質が変わったのか…いつの間に」
 肌を焦がし皮膚が縮れていく感覚が無かった。温い真水のように、澱の源泉から酸が失われていた。倣ってエルリオも手を突っ込んでみる。
「普通の水だね」
 先に立ち上がったヴィルを見上げながら、エルリオも水から手を放して腰を上げる。濡れた手に鼻を近づけて軽く息を吸い込んでみるが、饐えた臭いもしない。さすがに口をつける気にはなれないが。
「前からこうなのか、ここの水は」
「いいえ」
 ヴィルの問いに男は短く答える。
 確かにヴィルも、澱に落下したアレックの有様を見ていた為に確実に本日の昼時までは酸性で合ったことを確認している。
「震動を感じて、我々数人が崖を降りたのですが、澱の下流付近を調べていた時に気がつきました。もしやと思いこうして源流を辿ってみたのですが…結果は同じだったようです」
 入り江は長く尾を描き、地竜谷の麓へと続いている。少なくともこの支流は完全に酸性が中和されていると考えても良かった。
「……」
 三人の間から言葉が途切れ、竜の嘶きと風音交じりの静寂が漂った。
「俺には全く訳が見出せないのだが」
 ヴィルには珍しい、大きい溜息と共にそんな言葉が湿った土へと吸い込まれていく。
 複雑な印、
 反応を見せたミリアムに、
 表出した第二の人格リューシェ、
 消えかけていたミリアムの脛の印、
 弛んだ吊橋、
 動きをとめた精霊、
 中和された竜の澱。
 様々な異変が重なりすぎている。
「ごめん……私も…ぜんぜん…」
 夜の闇が光と共に思考力も奪っていくようで、エルリオには何も整理ができずにいた。
 また沈黙が降りて、その数秒後、高い空に竜王が巨大な翼を空に広げたシルエットが広がる。羽ばたき音が木霊して、ヴィル達の頭上を一度旋回すると闇の中へと消えていった。
 谷はまた夜の静寂を取り戻そうとしていた。



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