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北野ふゆ子
  • 北野ふゆ子
  • 昔は、ゲームやマンガの二次創作をしておりました。現在は主にオリジナルネット小説を執筆しています。得意は「シリアス」「アクション」「サスペンス」です。



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押印師 ACT1-3
03

 契約書と契約金を己の傍らに退けると、ワイヴァンは胸元から赤い棒を取り出した。赤い染料と鉛を混在させた粘土を固めて周りを乾燥させ、パルプで幾重にも巻いたもの。一見、手作りの鉛筆といった風だ。
「では、利き手を出してください。甲を上にして」
 少々の戸惑いを含んだ物珍しげな眼差しと共に、男の厚い手の平が机の上に差し出された。
 その手に向けてワイヴァンは卓上電灯の首をひねって光を当てる。男の手を取ると、その広い甲に染料の先端を当てた。
「いきます」
 短い言葉と共に、男の手の上で一気に筆が動かされる。肌色の上に、朱色の円陣が描かれた。円の中に、文字にも見える模様が複数描かれているが、男にはそれを読む事は出来ない。染料の湿り気が残る円陣の上に、ワイヴァンが素手をかざす。そして小さくなにやら呟いた。
 電灯に照らされ艶光りしていた朱色の円陣が、ワイヴァンの手の平から発せられた光を受けていっそう強く輝く。
「…っ」
 一瞬、焼けるような痛みを感じた男の眉根が強張ったが、しかし直後には消えうせた光と共に痛みも消失する。男の手の甲では、朱色の円陣がまるで焼き付けられたように浅黒く変色していた。
「押印完了です」
 かざしていた手の平を戻して、ワイヴァンは一つ深く息を吐いた。それを合図にするかのように、緊張していた男の面持ちが解けて行く。
「もう…終わりか?」
「ええ」
「刺青のように手間のかかるものだと想像していたのだが」
「よく言われます」
 物珍しそうに男は己の手の甲に刻まれた押印を眺める。赤い染料は、完全に肌に馴染んで乾いており、指先で擦ってみたが剥げる様子もない。
「これが…力の印か。どの程度の力がつくものなのだ?」
「そうですね~…」
 ワイヴァンの指先で、筆がくるりと回った。
「鋼鉄とまではいきませんが、木材ぐらいなら片手で粉々に握りつぶせるでしょう」
「十分だ」
 男は押印された己の甲を見つめて、何度か握りこぶしを作っては開いて、感触を確かめているが、
「強くなったような実感は…あまりないがな」
 小さく首をかしげた。そして直後、小さなテーブルの向かいに座るワイヴァンに向けて手を伸ばした。
「ぐっ…」
 喰い付くように、男の手がワイヴァンの喉を捕らえた。反射的に空気が握りつぶされたような呻き声が漏れる。勢いで椅子が倒れ、パイプ椅子がむき出しのコンクリートの上でバウンドして、けたたましい音が響く。
 ワイヴァンが咄嗟に男の腕を引き剥がそうと手を添えると、まるで乾ききったなめし革のように硬く、筋肉が隆起していた。
 強力(ごうりき)を司る精霊が男の細胞を奮起させ、滾らせているのだ。
「なるほど、これはいい。人間の首を縊るぐらいは容易いな」
 男の低い声が不敵に笑う。ワイヴァンの首を絞める指先に、さらに力が込められた。
「ごほっ…」
 仰け反っていたワイヴァンの首が、かくりと垂れた。
 縊り締めようとする男の手には、まだワイヴァンの脈が感じられる。
 その根を完全に止めるべく、男の指先はさらに筋張った。柔らかい首の肉に指が食い込み、気道を潰し、首の骨を潰し折る……はずだった。
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