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北野ふゆ子
  • 北野ふゆ子
  • 昔は、ゲームやマンガの二次創作をしておりました。現在は主にオリジナルネット小説を執筆しています。得意は「シリアス」「アクション」「サスペンス」です。



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押印師 ACT3-9
09

「一緒にいた人が、逃がしてくれたんだって」
 エルリオが答える。
 肩越しにテーブルの方を見やれば、いつの間にか羊皮紙が片付けられていた。
「軍に拘束されている間、ライザの高官が世話役として当てられていたみたい」
「先日、往来の真中で射殺されたという男のことかね」
「……うん」
「だとすると、ミリアムの意思ではなく、帝国の意図か…。末裔を取り戻し再び皇国制度を復活させようという、皇国派の動きは以前から巷でも噂されていたことだ。ありえない事でもない」
 そんな…とミリアムの声が漏れる。
「私…ライザなんて国のことは何も……ずっとアリタスにいたんです」
 手配者を握り締める。
「物心がついた時からグレンと二人で……」
「君の気持ちがそうでも、やはり血が許さないんだろう」
 サイクルは小さく息を吐いた後、ミリアムに向けて目を細めた。それが微笑んでいるのか、悲しんでいるのか、薄暗い室内では判別しかねた。
「逃げ出せてよかった。軍が君を拘束して三年の月日が経っている点が気になるが…あのまま軍に留まっていたら、君は殺されていたかもしれない」
 命が保留されていた理由が、あの羊皮紙にあったところが大きいのかもしれない。
「死んだライザの高官は、忠実だな。命をかけて君を逃がした、これがどういう事か、裏にどれだけの事実が繋がっているのか、覚えていた方がいいな」
「……」
 彼が命をかけて守ったもの。ミリアムの命、そして、あの羊皮紙。羊皮紙をミリアムに託したのはグレン、そしてその当人は行方不明。元を辿ればすべては「グレン」という男に真実が繋がっているように見える。
「用件はもうひとつ、あるんだ」
 沈黙が降り立ったのを機に、サイクルは話を切り出した。
 むしろこっちが本題だったのだがな、と彼は上着の内ポケットから茶封筒を取り出した。おもむろに、中から紙を取り出すと机の上に広げた。ちょうど、手配書に重なるように。
「軍から要請書が、エージェントらに撒かれている。優秀な押印師を紹介しろとね」
「………摘発ってこと?」
 サイクルの首が横に振られるのに促されて、エルリオは机上の文字を読む。
「本気で民間の押印師を摘発しようとするなら、とっくにやっている。だが軍は技術が欲しい。軍の資金力と技術力の範疇では、費用対効果が割に合わないものだ。だから表面上は違法とされる民間をある程度泳がせておく必要も、あるんだよ。押印技術に限らず、な」
「……あ」
 文字の上に見知った名前を見つけて、エルリオは声を上げた。
「お父さんの名前…!」
 軍発行の公文要請書。
 民間押印師の仲介業者に宛てたもので、軍が行方を捜している押印師の名が数名挙がっており、そこにエルリオの父、ワイヴァン・グレンデールの名があった。
「軍はとっくにお父さんを知っていた…」
「ワイヴァンが死んで、どのくらいになったかな」
「三年…もう四年目かな」
「この際だから知っておいた方がいいかもしれない」
 印刷されたワイヴァンの名。その側に手を添えていたサイクルの手が軽く握られる。
 エルリオは唾を飲み込んだ。
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