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北野ふゆ子
  • 北野ふゆ子
  • 昔は、ゲームやマンガの二次創作をしておりました。現在は主にオリジナルネット小説を執筆しています。得意は「シリアス」「アクション」「サスペンス」です。



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guardians16
16

 ゲームが始まって十分。
(……結構ムズいぞ)
 ゴールの中に吸い込まれたボールを見て、要は大きく息を吐いた。
 両手が使えるし、ゴール幅はサッカーの半分だし、簡単簡単…―と思っていたのが大間違い。普段のサッカーで使わない手が、思うように動かないのだ。頭では分かっていても、とっさの時に動いてしまうのはやはり足の方で、なかなかボールに手を出す、という行為と反射神経が結びつかないのだ。
 それに、同好会といえど過去にサッカー経験があるメンバーも多く、チームの連携もとれていて巧い。
 試行錯誤しているうちに、気がつけばあれよあれよと三点取られていた。
「コラー!要ちゃんしっかりしろー!」
 哉子の声が響いてくる。
「わーってるよっ!」
 意地になって応えると、ベンチにいる他の主婦達からも「要ちゃんしっかり~」と声が飛んでくる。
「………」
 どう応えて良いか分からず、迷っているうちに顔が赤くなる。気を取り直してグローブをした手をきつく握り締めた。相手ゴール前では、小さな競り合いが起きている。平山チームがシュートしたボールを、茂森が長身で横から飛びつきヘディングでクリアした。彼は先ほどから、前へ出ずにゴール前でディフェンスの役割を担っている。アタッカーではない自分の特性を活かしての動きだ。
(俺最近までフォワードだったんだけどな……)
 それが何故か今、こうしてキーパーなんぞをやっている。
(それにしても、何でこんなに入れられるんだ)
 いとも簡単にボールが自分を通り抜けてゴールに入っていく現象。まるでゴールの向こうに磁石があるように、ボールは吸い込まれていく。これがゴール前に立つのが茂森だと、逆にボールの方が茂森の手や体に吸い寄せられていくのだ。
(そんなわけねーんだけど)
 そう見えてしまう。
(あいつは…どういう動きをしていた?)
 試合中、練習中の茂森の動きを思い浮かべる。長い手足と身長、驚異的な反射神経は真似しようにも出来るものではない。だが、常に数秒先を見ている視線、相手の読みの裏のさらに裏を読む動き、それを盗めれば中背の要にも補えるはずだ。
「要君、来るよー」
 チームリーダーの平山から声がかかる。茂森がクリアしたボールを受けた石橋チームのエース(三十二歳・会社員)が平山チームのディフェンスを突破してくるところだった。
 これまでのパターンからすると、最終的にボールはこのエースか石橋に集まる傾向にある。両者の動きと距離を素早く確認する。コートの右端と左端それぞれに距離を開け、中央後方から遊撃的な動きをしていた石橋チームの男が上がってくるのも見えた。
(あの人が石橋さんへのパスを継ぐのかな)
 要の推測通り、右端にいた石橋がボールをキープするエースへの距離を縮めつつある。
(シュートは石橋さんか)
 要は、中央に意識を向けつつ石橋の動きを注目して構えた。
 その時、ふと後方で不自然に影が動いた。
「……?」
 不意に頭の隅に差し込んだ違和感、だがそれを確認する間も無く、予想通りにエースからパスを受けた中央の男が、石橋に向けてパスボールを蹴った。万全の体制から石橋がシュートに入る。
 弾道は真っ直ぐ。
 要は石橋のシュートコースへ横滑りするように駆け出した。
「ぃっ…!」
 差し出した手にボールが弾かれる。グローブ越しとは言え、痛い。
「おぉ??」
 哉子が目を丸くする。ゲーム開始から十五分。要が初めてボールに触れる事ができたのだ。だが喜んだのも束の間、こぼれて空中を泳ぐボールにいち早く追いついた長身の影があった。いつの間にか後方から上がっていた茂森。
「んなっ」
 さっきの違和感はコレか。
 要が自覚する前に、石橋の後方から飛び出した茂森のヘディングが、要の脇からボールをゴールへと押し込んでしまった。
「あー、おっしぃーい」
 スコアボードが「1-4」に変わる。
「守護神やるねー」
 石橋チームはシュートを決めた茂森にハイタッチを求めて輪を作る。
 ずっとセンターラインの向こう側で護りに徹していた茂森が、初めて攻勢に出た。それが、さきほどよぎった違和感の正体。
「どんまい、でも、いい感じだったよ!」
 平山チームの面々が、ゴールの中に落ちたボールを見下ろす要を激励する。
「………」
 それに応えながら、要は考える。
 感じ取った「違和感」をもっと具体的に理解していれば、もっと早くボールに反応できたはずだ。
 ゴールを奪われたのは、要が「パスが石橋に通る」と読んだ時点で既に茂森が要より更に先読みして実行動に出ていたからだ。
(何か分かったような気がする)
 パスが石橋に通ると読んだ時点で同時に、茂森が前に出てくるところまで予測できていれば、二重にゴールを防げたはずだったのだ。
(……次はいけるかもしれない)
 要はボールと、自分の手を交互に見やった。
 まだ、ボールが当たった痛みの感触が残っている。ゴールを狙う弾道に乗ったボールを打ち落とした、あの感覚。
 気持ちよかった。
 シュートを決めた時とはまた異なる快感だ。
 次は、両手でしっかりとボールを掴み取ってみたい。
 新たな感情が沸き起こり始めていた。
(なんか、こういうの、久々だ)
 茂森がよくやるように、要はキーパーグローブをはめた手を互いにぶつけて気合を入れた。
 中学に入る前まで、GKやDFは地味なポジションだと思っていた。
 特にGKは、体育の授業でも、クラブチームでも、小学生は誰もやりたがらない役目。要とて、そんな数多い小学生の一人だった。

 だがまず最初にその認識が変わったのは、中学入学前の夏。

 クラブチーム対抗の夏の選手権も終わり、夏休みも残すところ十日を切った頃。小学生の双子は、二人で京都から叔父夫婦を訪ねた。
 要が「暴挙」に出る数ヶ月前の事で、まだ聡と四条家本家の関係が円満だった頃の話だ。
「どこか行きたいところはあるか?」
 という、双子を出迎えた聡の問いに、
「東京の競技場に行きたい」
 要はそう答える。小学生サッカークラブチーム対抗全国大会が行われる場所だ。つい先日、要が所属するクラブチームが関西代表を決める地区予選決勝で敗退した為に切符を逃した、因縁の大会だった。
「そうかそうか」
 聡は快諾してくれた。
 サッカーをよく知らないにも関わらず、聡は他にも要の為に横浜のプロサッカーチームの観戦チケットを手配してくれたりと、この当時から色々と良くしてくれた。こうした聡の好意も、数ヶ月後には「たぶらかし行為だ」として四条家本家衆から絶縁状を突きつけられる要因となるが、この頃の要に予測し得るはずもない。
 全国大会が行われるグラウンドは二箇所あり、各所で午前二試合、午後に二試合の計四試合を二日間行い、三日目に決勝を行う。要達が訪れたグラウンドは、地元の住人が使う多目的競技場らしく、芝生ではなく土のグラウンドだ。
「お?」
 この日行われる対戦カードを見て、聡が裏返った声を出した。
「どうしたの?」
 要が聡の手元を覗き込むと、パンフレットを手渡してくれた。全国大会に出場するチームとメンバーの紹介と、スポンサー一覧が掲載されている。
「これから試合するこのチーム、うちの近所にあるチームじゃないか?」
 聡が指さすところに、「えー、どれどれ?」と要の後ろから、一緒についてきた哉子も覗き込む。
「桜台アークス?」
 要がチーム名を声に出して読む。確かに、「桜台」は聡が住む新興住宅街一帯を指す地名だ。
「……」
 要は手早くパンフレットをめくって中身に目を通す。
 全国大会に出場するクラブチームはいずれもプロリーグチーム付属のユースチームばかりで、これらはいわゆるプロ選手候補のエリート集団、対して「桜台アークス」は一地域、しかも区が運営し、所属するのは地元の小学生という、小さなクラブチーム。このような小規模チームが全国大会進出など、クラブチーム対抗リーグ戦では、前例が少ない。
 現に、桜台アークスは全国大会初出場のようで、チーム名の横に(初)の文字が付帯されていた。隣で聡と哉子が「(初)だって」「紅白歌合戦みたいだね~」と呑気に笑い合っている。
「ああ…このチームか」
 要が呟くと、
「カナ兄、知ってたの?」
 と哉子が背中に巻きついて横から覗き込んでくる。聡も「ほう」と関心した声を漏らす。「噂だけなら」と短く答え、要はパンフレットを捲る。
 もともと、人口が密集している関東圏の代表は、必然的に強豪チームが多いために注目度が高い。金廻りのいいプロチームのユースが全国大会常連となるのが定石となる中、激戦区神奈川で、プロチーム「横浜リーガルズ」のユースを破って勝ち上がったのが、一地区クラブだという―その事はクラブチームサッカー小僧の間ではちょっとした噂だった。
「ほら、あいつだよ」
 パンフレットから目を離し、要がグラウンドに姿を現した選手の方を指差すと、聡と哉子が同時に顔を向けた。
 SAKURADAIと背中に大きく書かれた、ほんのり桜色ユニフォーム集団、その中で一人だけ黒いユニフォームのゴールキーパーがいる。背中に番号一番と、左腕にキャプテンマークを身につけていた。
「あのキーパーが凄い奴らしいんだ」
「どう凄いの?」
 聡と同じくあまりサッカーを知らない哉子は首を傾げる。
 だが要も耳に聞くだけで、実質的にどうあの少年が凄いのか、知らない。
「どう凄いかは、これから観られるんだろう?」
 両腕を組んでゆったりと腰掛ける聡の言葉通り、間もなくキックオフだ。
 対戦カードは大阪レジスタンスユース対、桜台アークス。ちなみに大阪レジスタンスユースは、要の所属していたチームを破った相手だ。
(………桜台を応援してやろうかな)
 複雑な気分で要はパンフレットを閉じて膝上に置いた。
 そして試合開始からものの三十秒程で、素人の哉子や聡にも理由を実感できる出来事が起こる。
 試合開始間際で緊張が残っているせいか、桜台チームは極端に動きが悪い。ゆるゆるのディフェンスを、大阪レジユースはいとも簡単に突破して、まず開始三十秒でシュートチャンスに遭遇する。桜台ゴールに詰め寄る大阪FW陣。
「……?」
 違和感がこめかみをちくりと刺す。要は片目を細めた。その正体が判明する前に、大阪FWがシュートを撃つ。ボールはまるで狙ったかのように桜台キーパーの腕の中へ収まった。
「おー、キーパーとったね!」
 隣で哉子が観たままを声に上げる。隣で聡が「落ち着いてたなあ、あの子」と感心したように小刻みに頷いている。
「…あれ?」
 再び、違和感が要の五感をよぎる。思わず呟きが漏れていた。頭上に疑問符を生やしつつも試合の様子を観察し続ける。それから更にわずか十五分の間に大阪チームは七度のシュートチャンスを得た。だがいずれもボールは、桜台キーパーの手に吸い寄せられるようにして阻まれる。
「凄いねー、シュート全部防いでるよ」
「点をとられなければ「負けない」って事かあ」
 隣で素人二人がただひたすら感心している。素人故に、もやもや悩む要と違い、率直で核心を突く感想だ。
「でも、勝敗の行方がまるごとあの子一人にのしかかっているのは、危ういね」
「だなあ…」
聡の意見に要は頷く。桜台にはキーパーの他に小慣れたメンバーが三人ほどいるようだが、いずれにしろキーパーへの依存度はかなり高い。
「だとすると、状況的に、大阪有利、かな?」
要が負けたチームと知っていたので、聡は様子をうかがうように問いかけてくる。
「うーん、そうでもないかもしれない」
不明瞭な反応を見せる要を、隣の二人が物珍しげに眺めてくる。
「どうして?桜台の方は、あの子が駄目になったらおしまいじゃない」
「確かにそうだけど」と前置きする要の語気は平常だ。
「でも、桜台は引き分けにさえすれば、勝てる可能性が相手より圧倒的に高いんだぜ」
これは精神的にかなりのアドバンテージとなるはずだ。
「引き分けにすれば勝てるって??」と咀嚼しきれない哉子の横で、
「ああ、PKか」
一般常識程度にはサッカーが分かる聡が答えた。この大会ルールでは、引き分けのまま試合を終えた場合、延長戦ではなくPK戦となる。キーパーに最後の望みを託すこの場面、どちらが有利となるかは明白だ。
「あ~そっかあ」
ふうん、と呟き哉子は膝に頬杖ついて桜台のゴール前を眺めた。
桜台はチーム一丸となってゴール前を死守している。
大阪は何度もシュートチャンスを作りながら、得点に結び付ける事ができない。
「でも、こんな調子で90分も守りきれるものかな?」
ゴール前の競り合いを眺める聡が、要に尋ねる。
得点して勝つほうがリスクが少ないに決まっている。当然の疑問だ。
「まあ、みてなよ」
要も頬杖をつき前のめりにフィールドを眺める。双子揃って同じ姿勢で並ぶ様子に、聡は楽しそうに微笑んだ。
「見てると、どうなるの?」
と哉子。
「そのうち大阪は焦ってくるはずだ」
要の言葉通り、無得点のまま進む時間に業を煮やした大阪が、防御を担っていた面々までじりじりと、気がつけば前方に迫り出してしまっていた。
「んで、防御ががら空きになったところを……」
「カウンター!!」
要の解説を補うように桜台のキーパーがキャッチしたボールを遠くに蹴り上げ、叫んだ。
「おおっ!?」
急激な状況の変化に哉子は身を乗り出す。声にはしなかったが、要も同じ顔で同じ動きを見せた。ボールは一気に大阪陣営へ飛び込み、絶妙なタイミングで追い付いた桜台FWに渡った。
「んで、そのまま、」
ゴール。
「おお~」
先程から「お」しか発音していない哉子は、おもちゃのように両手を顔の前で叩いている。
「なるほどねえ」
聡もしきりに感心している。
「あのチームじゃ、この作戦でいくしか無いんじゃないかな」
これで桜台に乗ったバッファは実質二点。競り合いの中でこの差は大きい。案の定、焦った大阪はミスを連発するようになり、そのままPK戦になるまでもなく一対ゼロで桜台の勝利を示すホイッスルが鳴り響く。
「おお~…勝っちゃったよ」
 その瞬間、隣で大きく息を吐く哉子と同様に、観客席からは歓声よりも深い息が伴うざわめきが生じた。そんな中で、
「お父さん、やったっ!」
 同じ列、要の近くに座る客席から高い声が上がった。そちらを見やると、若い女が立ち上がって顔を輝かせていた。頬を紅潮させ、隣に座る初老の男の肩を片手でしきりに叩いていた。
「お父さん凄い!カズ君、勝っちゃったよ!」
 嬉しさのあまりその場で二度飛び跳ねた女は、ふと我に返り周囲との温度差に気がついて、照れ笑いしながら席に腰掛けた。足元に杖を横たわらせている初老の男は、目を糸のように細めて「凄いな、凄いな」と女の言葉に応える。
 グラウンドでは、ゴールキーパーを中心に桜台のメンバー達が輪を作って喜び合っている。対称的に、大阪チームは目に分かるほどに落胆した様子だ。
(ちょっと、かわいそうかな)
 いい気味だと思う一方で、大阪からわざわざやってきて一回戦敗退は少し気の毒にも思う。共感を覚えそうになり要は大阪チームから目を離す。喜び合う桜台チームに視線を移すと、ひとしきり喜び終わったメンバーの中で、ゴールキーパーの少年が客席を見上げて誰かを探しているのが見えた。左右隅々を見渡し、中央付近でその視線が止まった。
「?」
 一瞬、目が合った気がした。
 桜台キーパーは要らがいる方向で視を止め、表情を和らげた。遠慮がちで控えめな笑みをたたえ、グローブをしたままの手を大きく振ると、要の右方向にいた人影が大きく振り返した。
 さきほどの、若い女だ。初老の男も、控えめだが手を振っている。応援に来ていた家族だろうか。母親にしては若すぎる女は、姉なのかもしれない。だがそれにしては「お父さん」と呼ばれた男は少年の父親にしては年を取りすぎているようにも思える。
「いやあ、要の言う通りになったなあ」
「え、う、うん?」
 聡の声に我にかえり、要は大げさに振り返った。
「大阪チームにとっては災難だったけど、桜台住人としては楽しい試合だったよ」
 満足そうな顔で頷いている聡は、グラウンドの中央で整列する小学生達を眺めて目を細めていた。
「しかしどの子も一生懸命で、実にいい」と老けた台詞を言いながら。
「キーパーって、あまり動かないのかと思ったら、けっこう激しいんだね」
 哉子が要を振り返る。
「……」
 要は一瞬、その言葉への答えに詰まって、少し遅れてから「うん」と小さくつぶやき返した。
(俺も哉子とおんなじレベルか)
 多くの試合を経験してきたが、要もこれほど激しく躍動的な同年代のキーパーを見るのは、初めてだった。桜台のキーパーは他の前衛陣と変わらない、むしろそれ以上に汗と泥で汚れている。
 この時の要は初めて、ゴールキーパーというポジションが地味ではない事を知った。

「要君!」
 男の声。
「!」
 よぎった追憶の靄が掻き消え、意識の中にボールが飛び込んできた。
 自分の脇を通り抜けていこうとする弾道に向け、足で地を蹴り、手を伸ばす。
「っ!」
 息を止めて更に両手を伸ばした。
 白と黒の残像を描いた球体は、空気を包み込む要の両手に飛び込んで回転を止めた。
「わっ、とっ、うわ!」
 そのままバランスを崩してゴール脇へ転がる。全身で土の匂いを感じ、世界が回った。そして天と地を再認識した直後、腕の中に納まるボールの存在を感じ取る。
「やったあ!カナ兄!」
 語尾が裏返った哉子の声。嬉しくなって思わず振り返って応えた。
「取れた……!」
「ナイスセーブ!」
 平山チーム、石橋チーム双方から声が上がる。平山が頭の上で手を叩いて喜んでいた。
「やっ…」
 た、と言いかけて前方に向き直ると、面々の後方からこちらに笑顔を向ける茂森がいた。
「………」
 我を忘れて喜んだ自分に気がつき、要は己の頬が熱を持ち始めているのを感じる。
それは体の芯から込み上げてくる照れと、
そして自分でも気がつかない新たな感情のせい。

 小六の夏、「ゴールを護る」キーパーというポジションの激しさを知った。
そしてこの日、要は「ゴールを防ぐ」という事の気持ち良さを知った。
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