このブログに掲載されている「英雄の屍」の著作権は、管理人である北野ふゆ子に属しています。ブログはリンクフリーですが、無断転載、引用など、著作権侵害にあたるご行為はおやめ下さいますようお願い申し上げます。

Yahoo Messenger
お気軽にお声がけ下さい


others

北野ふゆ子
  • 北野ふゆ子
  • 昔は、ゲームやマンガの二次創作をしておりました。現在は主にオリジナルネット小説を執筆しています。得意は「シリアス」「アクション」「サスペンス」です。



超・長編小説同盟に参加しています。

私はClubA&Cに加盟しています。よろしければご感想をお聞かせ下さい。私も貴方の作品の感想をお送りさせて頂きます。
スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

このページの先頭へ
押印師 ACT3-2
02

「話を、整理しましょう」
 エルリオは立て直した椅子に腰掛けて、ミリアムにも着席を求めた。
「……」
 だがこちらを警戒しているのか、ミリアムは綺麗な顔に並ぶ眉根を潜めて、どうするか迷っているようだった。相手を警戒しているのはエルリオとて同じ事なのだが。
「キュー、来て」
「!」
 エルリオに呼ばれて、隣の部屋からずっと様子をうかがっていたキューが飛び上がった。いつもは、他人が来ている時は何があっても顔を出さぬよう厳命されている。
「いいよ、おいで」
「いいの?」
 恐る恐るキューが声を発すると「きゃっ!」とミリアムが短い悲鳴を上げて、一歩後ずさりした。エルリオはキューを拾い上げてテーブルの上に座らせる。その隣に、ピルケースを置く。
「キューっていうの。私の友達。この子に免じて、どう?」
「い…生き物……なのですか?」
「元はぬいぐるみなの。言葉を覚えさせようと思って、記憶系の押印をつけたんだ。ここまで色々と喋れるようになったのは…実は予測外だったのだけど」
 今では感謝しているけど、エルリオは付け加える。
 人形のように造詣の整ったミリアムに見つめられ、キューも負けじと見返した。
「こういうのを『美人』っていうんだな、エル」
 キューが「記憶」してきた外貌の造形学的統計から見て、ミリアムは「美形」の部類に入るらしかった。キューはただそれを「正確に」口にしただけのことであったが、ミリアムの頬が朱色に色づく。
「いえ…あの…私……………」
 そしておずおずとながらも、素直に椅子に再び腰を下ろした。

 アリタス国軍大尉、ランド・ブライトナーが佐官室から退室すると、ちょうど前方から同期の男が浮かない顔をしてやってくる所だった。乱雑に生える短い金髪のランドとは対照的な、艶やかな黒髪を持つ男。
「おう、アイラス」
 いつも呼んでいる名で手を上げて声をかけると、同期アイラス・ウェーバー大尉はようやく顔を上げた。するどい双眸がランドを見とめるが、声の主がランドと分かり若干表情を和らげた。それまでずっと考え事をしていたようだ。
「ミリアムお嬢さんとシェファルトは見つかったのか?」
「シェファルトは射殺した」
 短い即答に、ランドはさほど表情を変えず、軽く肩だけ竦めた。
「だが思いがけぬ邪魔が入った。彼が隠し持っていた「鍵」は奪われた。ミリアムは現在も行方が知れない」
「そりゃ~……」
 いわゆる「任務失敗」というヤツだな、とランドが呟く。
 アイラスはその報告に佐官室にやって来る所だった。
「思いがけない邪魔ってなんだ?」
「そうだな…」
 どう説明するべきか。
「かいつまんで話せよ」
 一瞬ランドから視線を逸らしたアイラスは思案する様子を見せるが、すぐにまた漆黒の双眸をランドに向けた。
「少女だ。鍵を奪った後、背中に翼が生えて飛んでいってしまった」
「なんだそりゃ。天使か?」
「印保持者のようだ。俺が見た限りでは、守檻の印と、名は分からぬが飛翔の印を使っていた」
「印を複数!?そりゃ珍しいな」
 言いながらランドは左手で首の後ろをかく。驚いた時に見せる彼のクセだ。
「それだけではなく、おそらくあれは押印師、しかも己に印を施していたように見えた」
「…何でそれが分かった?」
 先天的に体に印が現われる天啓印も、後天的な使命印も、意図的につけられた押印も、形状や見た目は其々に定まっておらず、一見してはそれがどれに属するものなのか見分けは付かない。刺青のように沈んだ色で肌に染み付いている物もあれば、フェイスペインティングのように色鮮やかに浮かび上がっているものもあり、アザのように模様が曖昧なものもある。
「その場で押印していたからだ。二回とも」
「その場…って」
「こう…」
 一場面ずつ思い出しながら少女がそうした様に、アイラスは右手で軽く左手の甲をなぞった。
「それだけか?」
 頷く。
 ランドは眉根を潜めた。アイラスと同様、少女が行った押印術と、ランドが軍部内で見た一般的な押印師とは、あまりにも異なっていた。
「その押印師はなんだって鍵を奪ったんだ?ミリアムかシェファルトの手先か」
「いや」
 様子からすると、部下が撃った流れ弾からシェファルトが救っただけの通りすがりであると考えるのが妥当だ。
「大佐には、どう報告するつもりだ?」
 妥協を許さないカタブツの上司が、この扉の向こうで部下の報告を待っている。この説明し難い事態に彼が良い顔をするはずがない。ランドは貧乏くじをひいた同期を思い遣らずにはいられなかった。
「とにかく、相手が特殊能力を持つ押印師であれば、それに対抗すべく人員体制を整えてもらうしかない。「彼」を探し出すのにも……鍵は重要な手がかりとなるしな…」
「『彼』……あぁ、あの人か…生きてるんかね…大体」
「その確証があるからこそ、軍がここまで目を血走らせているんじゃないか?」
「そうだな」
 言葉の切れ目を機に「じゃあな」とアイラスは報告書を手に佐官室へ踵を返す。
 ランドはごく自然な動きでその後に続いた。


スポンサーサイト

このページの先頭へ
この記事に対するコメント











管理者にだけ表示を許可する

このページの先頭へ
| BLOG TOP |
この記事に対するトラックバック
http://eishika.blog39.fc2.com/tb.php/15-ec39625b
このページの先頭へ
Powered by FC2ブログ / Template by chocolat*
Copyright © 2005 英雄の屍 All Rights Reserved.
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。