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北野ふゆ子
  • 北野ふゆ子
  • 昔は、ゲームやマンガの二次創作をしておりました。現在は主にオリジナルネット小説を執筆しています。得意は「シリアス」「アクション」「サスペンス」です。



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閑話(1) 本当はコワい国軍のはなし
第一回すきなキャラクターアンケートで上位に入った、
・エルリオ
・グレン
・イルト
・ミリアム
・ジャスミン
を使った番外編です。
一時間ほどで一気にノリだけで書きました。
非常に不真面目な話なので、お気をつけ下さい。

でも、書いてて楽しかったです(笑)














閑話(1)本当はコワい国軍のはなし










「あのさあ、士官学校生活って、どういう感じなんだ?」
 移動中の列車内、いつまでも続く山の景色に飽きて、イルトは暇を持て余していた。何の気なしに、向かいの座席に座るグレンに尋ねる。
「私も、興味があるお話です」
 ずっと本を読み続けていたミソラも、顔を上げて反応を示した。
「え?何で急にそんなことを」
 考え事をしていたのか、じっと窓の外の一点を見つめ続けていたグレンが、我に返って頬杖姿勢を崩した。
「予備知識を仕入れて心構えをしておこうと思って。あと、暇だし」
「そんな事は合格してからでも遅くないのに」
「………ぐっ…」
「………ぅ……」
 全く悪気の無い顔でさらりと出された答えが、二人の胸に鋭く突き刺さる。この男と接していると「言葉は凶器になりえる」という言葉を非常に体感できるのである。本人にその自覚は無いようだが。
「受験生はデリケートなんだぞ…」
「あまり縁起のよろしくない事を仰らないで下さい……」
 鋭く痛む(ような気がする)胸元を押さえて顔を引きつらせる両名に、グレンは柔らかく笑いかけた。
「だって、二人とも必ず受かるんだろう?」
「………」
「………」
 イルトとミソラは顔を見合わせる。激励のつもりで言っているのか、頭の良い人間特有の傾向だが「落ちるという選択肢がそもそも存在しない」と本気で思っているのか、どちらとも分かりかねた。いずれにしろ本人は全く悪びれていない様子なので、両方なのだろう。
「そういう事」
「そういう事です」
 少しだけの強がりを含めて、二人はそれを肯定した。
「そうだな~」との独語の後、
「一言で表すと、やっぱり「汗くさい」かな」
 と苦笑しながらグレンは答えた。
「年々女性が増えているとはいえ、やはりまだまだ男所帯だからね。全寮制だし」
 全寮制。なんとも悲喜こもごもを感じる言葉である。
 ちなみに士官学校が全寮制なのは、士官学校入学はすなわち「国軍入隊」と同意であるからだ。入寮したその日から、学生達は学業や戦闘技術の他、徹底的に規律と軍人精神を叩き込まれる事となる。
「うわあ大変そうだなあ」
 野放しとまではいかないまでも、田舎で自由に育ってきたイルトにとって、「規律」という言葉は不慣れなものだ。そんなイルトの不安を知ってか知らぬか、グレンは目を細めて笑う。
「集団生活における一通りの事は、経験する事になるんじゃないのかな」
「一通り?」
「と申しますと?」
「そうだなあ」と一瞬、視線を天井に向けてから、グレンは指を一本ずつ折って行く。
「学生間のイジメは当然あるだろ?それから教師や上官による嫌がらせだろ?自殺や自殺未遂もあったな。訓練中の事故死や過失致死とか―」
「ちょちょちょちょ、ちょっと待った」
「……」
 列車内に微妙な空気が走ったのを感じて、イルトは咄嗟にグレンを止めた。
「入学したその日からサバイバルだね」
 グレンは、さもそれが当たり前のように平坦な顔をしている。
「噂には聞いていましたが、やはりそうなのですね」
 隣で、ミソラが冷静な感想を述べる。
「どんな噂だそりゃ」
「私もそうだったけど、君みたいなタイプも上から目をつけられ易いから、気をつけた方がいい」
「君」のところでグレンの視はイルトを向いた。表情全体は笑みを保っているが、目は笑っていないように見える。
「目をつけられるっていうのは……」
「単純なものだと、階段から突き落とされたり、上から物を落とされたり、手の込んだ物となると、試験の不正の濡れ衣とか、訓練中にやたら事故が頻発したり―」
「ちょちょちょちょ、ちょっと待った」
 穏やかでない事項と共に次々とグレンの指が折られていくのを、またイルトが慌てて止める。
「何だそれは!」
 出る杭は打たれる。恐らくそういう事だったのだろう。
「よく生きてご卒業できましたね」
 とミソラ。イルトは全く同感だった。
 そこでグレンの表情が、一段と和らいだ。
「友達がいたから」
「………」
 両手の指では数え切れない程の「嫌な事」も、「友達」の存在が全てを打ち消してくれる。そんなかけがえの無い存在の中に、イルトの父親も含まれているのだろう。
「ライズがいつも、守ってくれた」
 それを尋ねる前に、グレンから応えが返る。
「………」
 のろけられたような気がして、イルトはむず痒さを覚え、思わず眼を伏せた。
 父親の名前を口にする時、グレンの眼には、自分に向ける時と異なる色が浮かぶ。その意味を、イルトは少しずつ分かり始めている気がしていた。
「とりあえず彼がいなかったら、いきなり入学翌日に階段から落ちて首の骨を折っていたかもしれないし」
「…………ソウデスカ」
「…………それはそれは…」
 もう突っ込みようがなくなってしまい、イルトもミソラも深い溜息を吐くしかなかった。とにかく「覚悟して頑張れ」という事は理解できた気がする。
「もちろんそんな殺伐とした事ばかりじゃないから大丈夫だよ」
 またグレンは、無害な笑顔に戻っている。
 もうこの表情に騙されるものかと、イルトは身構えた。
「規律は確かに厳しいが、「恋愛禁止」なんてルールは明記されていないからね。職場恋愛、結婚率は高かったと思う」
「へえ」
 ここまでの話の流れから、てっきり「不純異性交遊厳禁!」とでも校則に謳っているかと思っていたが、意外な事実だ。
「でも、男女比ではまだ圧倒的に男性が多いと聞いていますけど」
 とミソラ。確かにそういえば、学校案内にそんなデータが出ていた気がする。
「少ない女子をめぐって、これまた殺伐とした恋愛沙汰が起こってそうだな」
 結局またそのオチなんだろ、とイルトは目を細める。それを受けてグレンは、
「いや、そうでもなかったみたいだけど」
 と、罪の無い顔で答えるのだ。
「え?」と口を開くイルトに向けて、グレンはまた衝撃的な答えを口にするのだ。
「そういうのの対象は異性だけとも限らないみたいだし」
「!!」
「!!」
「だから当然、そういったハラスメントもあるわけで」
「!!」
「!!」
「それ絡みの暴行事件も起こるし、それは当然、罰則もあるわけだが」
「ちょちょちょ、ストップ!」
「………」
 イルトは髪が逆立つ程の衝撃を受け、流石のミソラも周囲に聞かれてはいないかと辺りを見渡した。静かだった列車内に、微妙な空気が流れているのは気のせいではないはずだ。
「……ふーん……」
 空気を読め!と言いたくなるが言葉にならず、イルトは気持ちの悪い汗を拭った。そんな微妙な空気の中で、
「驚いたかい?」
 とグレンは相変わらずだ。
「驚くって!」
「噂には聞いたことがありますが、本当なのですね」
「どんな噂だ!」
 グレンは呑気な面持ちで、そんなイルトとミソラの漫才を眺めている。
「だから、言ったろ?一通りの事は経験する事になるんじゃないかとね」
「「一通り」のバリエーション幅が広すぎるんだが……」
 そう呟くイルトは、未だ汗が引きそうにもない。対照的にその隣で冷静さを取り戻していたミソラは、「という事は」と言葉を続けた。
「グレンさんは一通りご経験されたってことなのですね?」
 何て質問をするんだ!と仰天するイルトは、自分が思っているより古風な考えの持ち主らしい。それともこの二人の感覚が逸脱しているのか。
「長生きしてると、色々あるんだよ」
 悩むイルトを他所に、グレンはまた車内の空気を淀ませる答えを悪気の無い顔で答えるのだ。
「そこから先は話すなよ!」
 思わず座席から腰を浮かしてイルトは手元にあったガイドブックでグレンの口元を塞いだ。
「え~…」
 その隣でミソラが肩を竦めている。
「お前はそこで残念がるな!」
 天然気質の人間の間に挟まれて気苦労を背負わされる。そういうイルトの運命は、この時すでに定着していたのであった。




 奇しくも同じ頃、列車に乗ってレクティカに向かう女三人の間でも、似たような会話が交わされていたのであった。
「ジャスミンさん、軍隊生活って、どういう感じなの?」
 移動中の列車内、いつまでも続く平原の景色に飽きて、エルリオは暇を持て余していた。何の気なしに、向かいの座席に座るジャスミンに尋ねる。
「私も、興味があるお話です」
 ずっと手元でキューをいじっていたミリアムも、顔を上げて反応を示した。
「え?何で急にそんなことを」
 考え事をしていたのか、じっと窓の外の一点を見つめ続けていたジャスミンが、我に返って頬杖姿勢を崩した。
「うーん、なんていうの?敵の実態もっと知っておこうと思って」
「私とヴィル様の事でネタを探しているなら、残念ながら何もないわよ?」
「………ぐっ…」
「………ぅ……」
 笑顔でさらりとかわされてしまった。すっかり思惑がバレてしまっているようだ。
「そんな事じゃないよー、単純な興味なの!」
「そうです、そうです!」
 少しだけの強がりを含めて、二人はそれに反論した。
「そうね~」と、ジャスミンは微笑を伴う独語の後、
「一言で表すと、やっぱり「汗くさい」かな」
 と答えた。
「年々女士官が増えているとはいえ、やっぱりまだまだ男所帯だから」
 男所帯。なんとも悲喜こもごもを感じる言葉である。
「確かにね~男って暑苦しいのが多いから……」
 と苦笑するエルリオの隣で、
「グレンは汗くさくありませんでしたよっ」
 とミリアムが頬を膨らませた。
「はいはい」と適当に受け流してエルリオは、
「でも、規則とか厳しそうだよね」
 とジャスミンに続きを促した。
 一人で生活してきたエルリオにとって、「規律」という言葉は不慣れなものだ。
「軍隊に入ると、集団生活における一通りの事は、経験する事になるんじゃないのかしら」
「一通り?」
「と申しますと?」
「そうね~」と一瞬、視線を天井に向けてから、ジャスミンは指を一本ずつ折って行く。
「イジメは当然あるし、それから上官のイビり、自殺や自殺未遂はしょっちゅうあるし、訓練中の事故死や過失致死とか―」
「ちょちょちょちょ、ちょっと待って!」
「……」
 列車内に微妙な空気が走ったのを感じて、エルリオは咄嗟にジャスミンを止めた。
「入隊したその日からサバイバルね」
 ジャスミンは、さもそれが当たり前のように平坦な顔をしている。
「噂には聞いていたけど、やっぱりそうなんだね…」
 額に浮かぶ汗を拭って、エルリオは呟く。ミリアムは隣でキューを抱きしめた。
「私、愛想もないし、可愛げのないタイプだったから、目をつけられ易かったのよね」
 言いながら、ジャスミンは微笑む。表情全体は笑みを作っているが、目は笑っていないように見える。
「目をつけられるっていうのは……」
「単純なものだと、階段から突き落とされたり、上から物を落とされたり、手の込んだ物となると、不正の濡れ衣とか、訓練中にやたら事故が頻発したり―」
「ちょちょちょちょ、ちょっと待って!」
 穏やかでない事項と共に次々とジャスミンの指が折られていくのを、またエルリオが慌てて止める。
「何それは!」
 出る杭は打たれる。恐らくそういう事だったのだろう。
「よく生きていられましたね」
 とミリアム。エルリオは全く同感だった。
 そこでジャスミンの表情が、一段と和らいだ。
「ヴィル中尉が上官になってからは、違ったわ」
「………」
 両手の指では数え切れない程の「嫌な事」も、ヴィルの存在が全てを打ち消してくれた。
「彼は、優れた上官だった」
「………」
「………」
 のろけられたような気がして、少女二人は急に照れくさくなり、思わず眼を伏せた。
 ヴィルの名前を口にする時、ジャスミンの眼には、常と異なる色が浮かぶ。その意味は、分かりきっていた。
「とりあえず彼と出会わなかったら、どこかで戦死していたかもしれない」
「…………」
「…………それはそれは…」
 突っ込みようがなくなってしまい、エルリオもミリアムも深い溜息を吐くしかなかった。とにかく、いかにヴィルがジャスミンにとって特別か、という事は理解できた気がする。
「もちろん軍隊ってそんな殺伐とした事ばかりじゃないわよ。ちょっと大げさに伝わっているみたいだけど」
 またジャスミンは、無害な笑顔に戻っている。
「規律は確かに厳しいけど、「恋愛禁止」なんてルールは特に無かったし。職場恋愛、結婚率は高かったと思ったわよ」
「へえ」
 ここまでの話の流れから、てっきり「不純異性交遊厳禁!」とでも軍規に謳っているかと思っていたが、意外な事実だ。
「でも、男の人の方が多いのですよね、やっぱり」
 とミリアム。
「少ない女性をめぐって、これまた殺伐とした恋愛沙汰が起こってそうだよね」
「ねー」
 少女二人は顔を見合わせる。
「耳年増はこれだからイヤだね」
 ミリアムの手元からそんなつっこみが出て、エルリオは有無を言わさず白いキューの頭に拳骨を沈めた。
 それを受けてジャスミンは、
「うーん、そうでもなかったみたいだけど」
 と、罪の無い顔で答えるのだ。
「え?」と口を開く少女二人に向けて、ジャスミンはまた衝撃的な答えを口にするのだ。
「そういうのの対象は異性だけとも限らないでしょう?」
「!!」
「!!」
「だから当然、そういったハラスメントもあるわけで」
「!!」
「!!」
「それ絡みの暴行事件も起こるし、それは当然、罰則もあるわけだけど」
「ちょちょちょ、ストップ!」
「………」
 ミリアムは思わずキューを落としてしまう程の衝撃を受け、流石のエルリオも周囲に聞かれてはいないかと辺りを見渡した。静かだった列車内に、微妙な空気が流れているのは気のせいではないはずだ。
「……ふーん……」
 空気を読もうよ!と言いたくなるが言葉にならず、エルリオは気持ちの悪い汗を拭った。そんな微妙な空気の中で、
「そんなに驚くこと?」
 とジャスミンは相変わらずだ。
「ええ…!?」
 ミリアムは顔を真っ赤にしている。
「噂には聞いたことがあるけど、本当なんだ」
「どんな噂ですかっ」
 ジャスミンは呑気な面持ちで、慌てふためく少女二人の様子を楽しそうに眺めている。
「だから、言ったでしょ?一通りの事は経験するってね」
「「一通り」のバリエーション幅が広すぎるんだけど……」
 そう呟くエルリオは、未だ汗が引きそうにもない。ミリアムも、ひろいあげたキューで顔を隠しながらも、「という事は」と言葉を続けた。
「ジャスミンさんは……その、一通りご経験されたってことなのですか?」
 何て質問をするの!と仰天するエルリオは、自分が思っているより古風な考えの持ち主らしい。
「もう少し大人になったら教えてあげるわね」
 真っ赤になる少女達二人を他所に、ジャスミンはまた車内の空気を淀ませる答えを悪気の無い顔で答えるのだ。
「えーっ!」
「大人って何歳のことですか?」
「成人は二十歳だけど」
「まだまだ先ですねえ。残念です」
 そんな少女達の他愛もない話を聞きながら、ジャスミンはまた、柔らかく微笑むのだった。
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