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北野ふゆ子
  • 北野ふゆ子
  • 昔は、ゲームやマンガの二次創作をしておりました。現在は主にオリジナルネット小説を執筆しています。得意は「シリアス」「アクション」「サスペンス」です。



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押印師 ACT4-3
03

 長を除く面々と同様、その男の面持ちにも困惑と混乱が表れていた。ことに周囲を覆い尽くす印を眺める瞳には、暗雲のような絶望が浮かんでいる。そのうち床から力を吸い取られたかのように男は、足下からゆらりとその場に膝をついた。
「…あ……」
 思わず手を差し出しかけて、イルトは寸でのところで躊躇った。支えねばと思う一種の使命感と、触れてはならないという一種の畏怖とが葛藤した結果だった。
 キルマイトの床に膝をついた男は、左手を床につける。そこから水辺に波紋がひろがるように、キルマイトの下で巨大な模様が、光の回路を淡く描き始める。「反応」しているのだ。
「…………」
 男は、小動物を撫でるように床を小さく撫でる。キルマイトの下にある印に触れようとしているかのように。淡い光が、いとおしそうでもあり淋しそうでもある男の面持ちを、照らしていた。
(印が生きているようだ)
 イルトは思う。
 長やアムリが印に与えた契約的なやりとりではなく、もっと有機的な何か。
 言葉にできない感覚を、イルトは無意識に感じていた。
アムリも、長に説明を求める視線を向けているが、当の長は男の気持ちに整理がつくのを待っているかのように静かにただ、様子を眺めていた。
「今は、何年なのですか」
 静寂が覆い尽くしていた場にようやく男の一声が響く。名残惜しげに床から手を離し立ち上がる。光はもう消えていた。
質問の意図がわからず、イルトはわずかに眉を顰めた。
「暦ですか?71年…ですけど」
「共暦2571年…?まさかアリタスフューリー暦71年なんて事は…」
 アリタスフューリー暦71年は今から更に数十年も先である。イルトが「共暦です」と答えると男は「そうか」と呟きながら左手を口元に当てる。僅かに震えているようだ。
「それでも三年…あれから三年も………」
 三年。この言葉にイルトは思い出せうる限りの年表を記憶から引き出そうとしたが、特段おもいあたる節はなかった。
少なくとも自分に関わる部分では。

「……どうぞ…」
 テーブルに出された温かい飲み物。アムリが男のために用意した薬草茶だった。鼻腔を通り抜けていくような涼しげな香り。アリタスの山岳地帯に群生するもので、精神安定の作用がある。お香やお茶、薬に混ぜるためによく使われる薬草だ。男の様子から気を利かせてのことだろう。
 ゆらりとカップから立ち上る白い湯気をしばらく眺めていた男は、そのうち躊躇いがちにカップを手にとった。
 キルマイトの空洞から地上にあがり、長は屋敷の一室に男を招きいれた。簡素な内装だが、中央に置かれたテーブルには貴重な大理石が使われており、村では板敷きのフローリングが一般的なのだが、ここには伝統模様が描かれた絨毯が敷かれている。室内は人払いがされており、そこにいるのは男以外に長、アムリ、イルトのみ。
 男がいくぶん顔色を取り戻した頃を見計らい、ちょうど対面に腰掛ける長が静かに言を発した。
「随分と、お久しぶりですな」
「え…?」
 男が顔を上げる。両手はカップに添えられていた。その温かさを感じているかのように。
「ご無理もない」と長は顎全体を包み込むように蓄えられた髭を触りながら軽く笑う。
「もう、何十年も前の事ですから。私は当時まだ、そう、そこにいる孫らと同じような年齢でした。今では面影もありませんな」
 長の瞳に追憶の光が点り、口元にくつくつと笑みが漏れた。
 一方で周囲の面々は長の言葉に違和を感じざるを得ない。長がイルトらの年齢であった頃、この場にいる者は、男も含めてまだ生まれてもいなかった頃ではないのかと。実際、その計算は正しい。
「……」
 長の言葉に男は、長が腰を下ろすソファの背後に控えて立つイルトを見やった。続いてアムリの方へと視線が動く。そして口元に指をあてて考える仕草を見せた直後、男は「あ」と小声を洩らして再び長へ視線を戻した。
「もしやデナウ……?ファルス長老に次期長だとご紹介頂いた事がありました」
 デナウとは、長の名だ。
「左様で」
 名を呼ばれた長はまた恭しくわずかに頭を垂れた。
「あぁ…失礼、そのご様子だと、長とお呼びするべきでしたね」
 初めて、ほんの僅かながら目端に笑みを見せた男に長は首を横に振った。
「…???」
「………????」
 ファルス長老は、アムリやイルトから曾々々祖父に当たる人物で、先々代の長である。時系列をまったく超越した両者の話に、孫二人は完全に置き去りにされている。アムリがイルトにちらりと視線を向けるが、イルトは男の顔をじっと見つめたまま、動きを止めていた。
(……誰なんだろう)
 イルトは考えていた。
 どこかで、いつかどこかで自分はこの男を見たことがあった。落ち着きを取り戻したその声も。何より寸時かいま見せたあの笑みにも、イルトは只ならぬ感慨を得ていた。でも、その正体が分からない。薄い靄の中を記憶が懸命に足掻いているようなもどかしさ。
「あの…お爺さま……」
 説明を求めるべく、恐る恐る割って入ったのはアムリ。両手にはトレイを抱いたままだった。長の視線が孫娘に、そして再び男に戻った。それを受けて男もアムリを見やり、そのすぐ側にいたイルトに向き、そして再び長に戻り最後に小さく頷いた。
「この方は…?」
 皆の佇まいが改まったのを目視し長の言葉が続く。
「この方の御名はグレン・ノースクリフ殿。いや、グレン・イーザーの名前の方が…お前達にも聞き覚えがあるだろう」
「え」
「は?」

 それは、つい十三年前にアリタスを救った大将軍の御名のそれだった。

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押印師 ACT4-4
04
 アリサは今日も本を抱えていた。
積み上げて体が隠れてしまうぐらいの本やファイルを抱えて遠慮がちに歩く姿が、毎日のように軍部敷地内のあらゆる場所で見られるのだが、それを気に留める者は極端に少なかった。
「アリサ・ラフォント君」
「あ、は、はい」
 名を呼ばれてアリサは振り向いた。
「これも頼むよ」
 と無造作に積み上げられた本の上に更にファイルを足された。先輩にあたる尉官の男は何事もなかったかのように同僚と共にその場を立ち去ってしまった。
 職場の人間は彼女をこうして揶揄をこめてフルネームで呼ぶ者が多い。絶世の美女である事で有名な同姓同名の女優がいるのだが、アリタス軍中央部情報課に所属する新米下士官のアリサ・ラフォントはそれと似ても似つかない。
不細工ではないが、華がないのだ。司書の資格を持つ彼女は軍部でひたすら毎日、ありとあらゆる「紙類」に接する日々を過ごしている。アーキテクチャー論上、たいていの施設では「資料室」「図書室」といった空間は隅に追いやられがちなものであるが、軍部においてもそれは例外でなく。
「隅っこが私にはお似合いだわ」
 そんな自覚もともなって彼女の地味さに更に磨きをかけていた。外貌に見合い、もともと社交的な性格でもなく、彼女は現状に満足している。ただ、もう少し無難な名前にしてほしかったと両親にたわいもない文句を持っているだけ。
 彼女の現在の主な業務は、平たく言えば軍部内の「資料整理係」である。だがいずれ資格をとり高級書記官になるのが彼女のささやかな夢だった。高級書記官の中でも更に出世すれば、将軍や総統の専門書記官の席がのぞめるが、彼女はそこまで高望みはしていない。
 現在でも新米とはいえ、ちょっとした会議の書記や、佐官クラスが取り扱う書類を手にするぐらいの機会と権利は彼女に与えられていた。もっとも情報漏洩は大罪にあたるため、何かあれば新米とはいえ首が飛ぶ。そこもアリサはちゃんと自覚していた。
「失礼いたします」
 大量の資料をかかえてアリサはとある佐官室へと入る。ここは諜報に長けたジョシュ・シールズ大佐を主としている。
「やあ、いつもありがとう」
 そう彼女は出迎えたのは当のシールズ大佐だ。部屋全体を見渡せる位置にある、ベッドほどの大きさはあろうかという巨大なデスクの向こうにいた。見慣れたアリサの姿を一瞥して、すぐにまた手元の書類に視線を落とす。アリサはいつものように部屋の脇に設置された資料棚へと向かった。デスクの脇に、部下だろうか若い男が二人、立っていた。さりげなく制服の作りを観て彼らが尉官である事を知る。片方の顔には見覚えがあった。確か、生まれながらの印保持者としてちょっとした有名人の、アイラス大尉だ。
「その少女がワイヴァン・グレンデールの娘であることは確かなようだな」
「はい。学園に提出させたそちらの在籍証明書類が決定的かと存じます」
 三人の会話が流れてくる。
(…女の子を捜しているのかしら?)
 棚の前に陣取り、大量の資料の入れ替えと整頓などを行いながらアリサは三人の会話をBGMにしていた。
「しかし肝心の父親の足跡は五年前に住んでいた借家までしか辿れない…」
「ええ」
「技術を他国に横流しする事態だけは避けて欲しいものだが…追跡が途切れているとしたらなんとも言えんな…」
「娘が国内にいるのだとしたら、その可能性は低いのでは?」
「分かったものか。旧ライザの亡霊やあまつさえディノサスのハイエナどもも訝しい動きをしているというし」
(うわー…物騒な話ね)
 肩をすくめながらも聞き流す振りをしてアリサは作業する手の動きを速めた。
「大佐、いるかな」
 外からノック。
「失礼するぞ」
 返事を待たずにドアが開けられた。ほぼ同時にカツッと軍の長靴が床にあたる音が二つ、そして椅子から立ち上がる音が一つ。
「!」
 慌ててアリサは手にしていた資料をその場に置き、振り向いた。
 入室してきたのは、准将の位を持つ将官、いわゆる「将軍」様であったのだ。
「は!」
 二人の尉官とシールズ大佐は背を伸ばして敬礼し、将軍を出迎える。アリサもそれに倣った。
「急に悪いな。ちょうど近くで会議に参加していたところだったんだ」
 温和な口調でそう微笑んだのは、ライアン・グスタフ准将。
 先の対ライザ帝国との戦いで指揮をとり戦果を上げ、数年前に将官に昇進したばかりの新任将軍だった。齢四十前の、将官としてはまだ若い。なのに驕る態度もなく、部下に友人のように接する事から若い士官達には受けが良かった。「楽な姿勢でいい」とシールズ大佐に着席を促し、自らは立ったままでシールズから報告書類を受け取った。
 軍服は基本的にどの位でも深緑と黒で統一されているが、将官の場合は軍帽のデザインが他の仕官たちと異なる。アリタス軍の紋章をあしらったプレートが縫い付けられているところは同じなのだが、鍔が無く一見したところ略帽のようにも見えるが、黒の縁取りは幾重にも編みこまれたシルクに金糸が織り込まれているもので、裾の長い将校制式服と合わせるといかにも厳しく、将に相応しいそれだった。
「君も仕事にもどっていいよ」
 傍らの資料棚で直立敬礼し、半分ぼんやりと制服に見とれていたアリサに小さく笑う。
「は、はい、将軍閣下」
 緊張のあまりに、壊れたブリキ玩具のようにようやく返事をしてアリサは再び資料棚と向き合った。
 シールズ大佐の報告書に目を通してグスタフ准将は己が抱えていたファイルの一つを大佐に手渡した。
「これは…」
「どうも現場時代のクセが抜けなくてね、貧乏性も抜けないし」
 グスタフ准将が手渡したファイルは、先日しかれた全ての検問所近辺での調査結果と、反応があった区域周辺に的をしぼったこれもまた重箱の隅をつつくような興信調査の結果を記したものだった。
「まさかこれ全部…ご自分で…調査されたので?」
 尋ねたのはアイラス大尉の横にいたブライトナー大尉。尊敬とも畏怖とも、「呆れている」とも言える色を両眼に浮かべているようだった。実際、グスタフ准将は「鍵」と「彼」の失踪から端を発した一連の押印師騒ぎの調査任務は担務の範囲外で、正式な任務担当指揮官であるシールズにこうして接触する事は個人的な約束レベルで内密とされていたのだ。
 アイラスの言葉には無意識に「忙しいのにいつ仕事しているんだ」という揶揄が含まれていたが、それを受けて「はははは」と笑い飛ばす将軍閣下。どうせここにいる全員にそう思われているのだから。
「まさか。いろいろ、あるのだよ、うん」
 人を煙に撒くような笑みで頷いた将軍はそれ以上語らずシールズ大佐のレポートを机に戻した。
「私情を挟んでばかりで申し訳ないとは思うのだがね…」
 グスタフの声に靄がかかる。
「いえ、このように我々では及ばないデータまでご提供下さりご助力痛み入ります」
 素早く中身に目を通しながらシールズが浅く息を吐いた。軍が進めている調査とは異なった切り口で、おおっぴらに外には出せないネットワークを駆使して集めた情報だった。これをどう正式な調査に盛り込むかが、将官を補佐する佐官としてのシールズの頭の見せどころだと言えよう。
「あいつが軍を離れると言った時にもっと強く引きとめていれば事態は変わったんだろうな…」
「……」
 机に添えられた将軍の手の平が強く握られる。それに気付いてシールズが見上げると、グスタフ准将の視線は窓の外に向いていたが、恐らくは何も映っていないのだろう。
 グスタフの言う「あいつ」は「彼」である事は、シールズ含めアイラスやランドにも分かっていた。准将が「彼」の友人で共に十数年前の戦いを共有し、「彼」が半ば強引に退役した後もしばらく連絡をとりあっていた唯一のパイプ役だったのも准将であったし、その事実はこの任務に関わる人間の多くは知っていた。准将がこの任務に正式任命されなかった理由もそこにあるという事実も含め。
 そして「彼」とは、十三年前に英雄として名を馳せた将軍、グレン・イーザーである事も。
 しかし「鍵」の正体を知る者は少なかった。

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押印師 ACT4-5
05
 常温が保たれているはずの室内に一筋に涼風が吹きぬけた気がしてアリサは手を止めて肩を竦めた。感傷的なグスタフ准将の声、言葉になるべく意識を向けないように努力するのだが、如何せんそう広くはない室内、無視するのも不自然に思えたが、今のアリサの立場では言われたままに仕事を続けるしかなかった。
「ダメだな!年くった証拠だな」
 グスタフは窓から視線を戻す。すでに勢いよく入室してきた時と同じ面持ちに戻っていた。
「そういう訳だ、シールズ大佐。国境線近辺への注意も怠らずに調査を続けてくれたまえ。また邪魔しに来る」
「は!」
 踵を返す将軍にシールズが再び敬礼。それに倣い二人の尉官も礼をとった。
(こ、これには敬礼しなくてもいいの…よね?)
 アリサは肩越しにこっそり後ろを見やる。准将とがっちり視線が合ってしまい…、
「手が止まっているぞ」
「は、はぃ!申し訳ございません!」
 結果的に敬礼をしたがために、更に手元にあった資料を全て落として仕事を増やしてしまうのだった。
「ははははは」と笑いながらグスタフ准将は部屋から出て行った。大きな歩幅でガツガツと廊下を歩いて遠ざかる音。それが止む頃に、今度は逆方向から複数の忙しない足音が向かってきたかと思うと、
「失礼します!」
 と若い男女二人が半ば駆け込む形でやってきた。同じ顔をしている。
「………」
「今度はなんだ」といった風に出迎える室内の面々の様子に女の方が気付いて敬礼する。
「騒々しくて申し訳ありません!私はライアン・グスタフ准将が護衛官、ソフィア・リディル中尉であります」
「オースティン・リディル中尉であります」
 少々有名な双子の尉官であった。射撃や体術の腕と両者の連携を買われて現在はライアン・グスタフ准将の護衛官を勤めている。
「ああ、准将なら先ほど出て行かれたばかりだぜ」
 ランドが答えるとほぼ同時に二人は「恐れ入ります!」と声をそろえて再び部屋を出て行った。バタバタと廊下の奥へと足音が去って行く。
「やれやれ。行動範囲が広い上司を持つと部下は苦労するな」
 護衛官に告げぬまま会議から直接ここにきたのであろう准将の行動力にシールズは肩を竦めた。
「書籍の入れ替えが終わりましたので、私も失礼致します」
 機を見て本棚の前から出口へと移動していたアリサが小さく敬礼し、未だ残る騒々しい風と共に扉の向こうに去っていった。
「ご苦労」
 ようやく室内に元の空気が戻ってきたようだ。
「それにしても…」
 准将が残していったファイルを眺めながらアイラスが呟く。
「このファイルを見る限り、准将は勤務時間外の殆んどをこれに費やしたと見えますが」
「俺なら勤務時間以外にこんなもん作ってたら寝る時間がなくなりますよ」
「いや、お前には足りないだろう明らかに」
「む……っ…うん…足りないな…」
 ランドとアイラスのやりとりを軽く笑い飛ばしてからシールズは一つ長い息を吐き出した。
「実際そうなのだろう」
「グスタフ准将は随分と「彼」にご執心なんすね」
「……」
 ストレートなランドの問いにアイラスは僅かに目を細めるが、シールズは気にしている様子はなく頷いた。
「イーザー将軍の探索任務メンバーに任命されずに激怒したって話だ。そもそも三年前のアパートメントを軍が突き止めたのも、唯一コンタクトをとっていたグスタフ准将の身辺を内密調査した結果だというしな」
 その当時、グスタフ准将は未だ佐官の地位におり、当時の直属上司である准将に食って掛かったのは一部で有名な出来事だ。こうした私情を交える恐れのある立場の人間を正式任務から除外するのは定石である。
もっとも、それに大人しく従う性分でもないわけだが。
「『執心』つながりで、疑問があるんですが」
 とランド。手元の資料を丸めてホワイトボードに描かれたチャートを指しながら。
「なんだ」と答える代わりにシールズとアイラスがほぼ同時にそちらを振り向いた。
「イーザー将軍と、彼が持つ『鍵』にたどり着くために」
 ランドの手に丸められた資料が、チャート上に書かれたそれぞれの名前を辿る。
「その『鍵』を託されたと思われるミリアム、ミリアムから託されたシェファルト、更にシェファルトから託されたグレンデールの娘…結果的に我々は将軍と『鍵』の行方にたどり着くためにミリアムとグレンデールの娘も有力な手掛りとして追っているわけです」
その動きが、ミリアムと「彼」の間に引かれた線の上で止まった。
「それで?」
 アイラスが続きを促す。
「アイラスの証言によれば『鍵』も結局シェファルトが所持していたという事は元々ミリアムの手にあったわけですが、そしたら何故将軍はそれをミリアムに託したのか。」
 シールズは黙って耳を傾けていた。
「将軍と、ライザの末裔であるミリアムとの立場的な関係性は、戦後処理の過程で関わる可能性が濃厚だとしてまだ分かります。しかし、その後ごく短期間のうちに将軍はまだ赤ん坊のミリアムを伴い強引に軍を退役なさっている。そして三年前のアパート騒ぎで再び行方不明となり軍がミリアムを拘束するまで彼女とずっとすごしており、すでに『鍵』は秘密裏にミリアムに託されていた。それだけの事をする動機が、どうにも俺はこの線上に見出す事ができないんですよ」
 ミリアムとイーザー将軍の間に引かれたホワイトボードの線。少々消え掛けた線を、徐にアイラスがマジックを手に取り引きなおした。「キュッ」と小気味良い音が転がる。
「動機?」
 好奇心が混在した悪戯な少年のように、シールズ大佐はボードを指差した。
「何故イーザー将軍はミリアムを伴い軍から離れる必要があったんすかね」
「そんな込み入った事情は知らん」
「この両名をつなぐこの線が、」
 ランドの手がボードの線を二度、叩く。指の背にインクが付着したのをランドは無造作に軍服に擦り付ける。
「何かしらの『情』によるものなのか、『利害』によるものなのかを知る必要は…あるんですか」
「………何を言い出すんだお前は」
 苦笑しながらシールズは立ち上がる。ホワイトボードの前にたつと、線の上に添えられたランドの手を軽く叩いた。
「いいか、それが『情』によるものならスキャンダル、『利害』によるものなら国際問題だ。疑問に思う気持ちは分かるが、それを公の場で口にするなよ。市井レベルにまで漏れたら更に事態が混乱する。俺達はただ、そこにある『状況』だけを見ていれば良い。というより、そうでなければならない。我々に与えられた任務の最優先事項はイーザー将軍だ。彼さえ軍に戻ってきてくだされば、全てが解決する……我々にとってはな」
「……はい、了解っす」
 存外、釈然としない様子でもなく、ランドはあっさりとシールズの忠告を飲み込んだ。軽口を叩く性分に見られがちだが、彼も子供ではないという事なのだ。





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押印師 ACT4-6
06

 グレン・イーザー。または、「零将軍」。
 この国でこの名前を知らない者は、ほぼ存在しないのではないだろうか。
 約二十年前に異例の若さで将官に昇格。度重なる周辺の列強国からの威圧行動から国の防衛線を護り続けてきたが、一躍その名を全国規模にしたのは十数年前のライザ帝国との戦いだ。かの戦争では国を勝利に導くだけでなく、加えてライザ民政軍が提示した鉱脈地帯の権利も得た事から、国と民に富までもたらしたとして英雄視される事となり、数年前にはACCの噴水広場に像も建った。「零将軍」という一つ名は、将官就任後からの戦績に黒星が一つとして存在しない事からつけられたという。
 これほどの著名人でありながら、だが、存外その外貌は知られていない。だから長が、目の前にいるその人物を、その英雄の名で呼んだことにイルトらは何の実感も沸かないでいる。意外性がありすぎると、人間は存外、驚かないものなのだ。
「これ、ご挨拶しなさい」
 長の叱責混じりの声に、イルトは我に返った。
「し、失礼致しました…!」
 先に動いたのはアムリだった。咄嗟に男に向かい深い礼を見せ、イルトもそれに倣う。
「いえ、いいんです」
 男の自嘲気味な声がそれを制した。
「このような状況でその名で名乗っても、信じろというのも無理な話ですから」
 ごもっともだ。イルトは改めて男を観察する。男は将官職の者が身につける制服姿ではなく、一般的に市民によく着用される白いワイシャツを身につけている。容姿も体格も特筆して雄々しいのでもなくむしろ平凡で、それは市民が抱くであろう「英雄」の名が持つ雄々しき印象とは大きく異なっている。現にイルトが抱き続けていたそれともずれていた。
マスコミ嫌いでも有名な将軍が唯一メディアに姿を晒したのが、ライザとの大戦勝利直後に国民に向けて軍が打った軍報号外。そこに、「零将軍」を写した唯一の写真が掲載されていた。だがそれも、翻ったマントと目深に被られた軍帽により顔が半分隠れた状態の横顔で、素顔はほとんど分からない。辛うじて、年恰好と性別が分かるぐらいで、市民の想像をかきたてた。
 イルトとて例外ではなかった。
「それに、私はそのように敬って頂ける人間では、ないのです」
 本来なら明朗に響かせるべき声は静かに沈んでおり、そして砲撃の命であるべき言葉は自嘲を含んだもの。 それ以前に、
(……絶対におかしい)
 イルトは男の容貌をまじまじと見つめざるを得なかった。アムリも同じことを考えているに違いなかった。
(計算が合わないじゃないか)
 イルトに分かる範囲での記憶では、戦争が終結した十三年前、少なくともイーザー将軍は二十代半ばの青年であった筈である。軍報号外に掲載された写真は、顔が隠れていようとも体型はどう見ても子供のそれではなかったはずだ。そうなれば今は四十台ぐらいだろうか。しかしどう見ても目の前の男は、それより若い。それどころか、まるで先々代の長までも見知っていたかのような口ぶりも、説明がつかない。
「ところで、将軍閣下」
 言を発したのは長。
「私は既に軍籍は退いていますので」
 男がやんわりとした口調で答えると、「え?」という声と共に長の目尻に更に深い皺が寄った。
「退役されたのですか?」
「はい。もっとも、軍から正式な許可は下りませんでしたが」
 国の要人の人事については、必ず公式発表が行われる事が憲法とされている。大戦の英雄ともあればその引退は国を挙げての式典も伴うはずであるのだが、そうした話は一切聞いていなかった。それを察して長は声を落とす。
「……グレン殿。貴方がここに現われた、もとい、戻られたという事は……察するに余る出来事があったかと存じますがの……」
「………」
 長の言葉に男、グレンは手にしていたカップを静かにテーブルに戻した。瞳の端が細く歪み、それはまるで小さな痛みに耐えているような。両手を膝に添える形で少し前のめりに背を屈める。左手の指先をこめかみに当てて、小さく唇を噛んだ。
「三年前……」
 耳に届くか届かないか、微かな言葉が男の口元で呟かれる。それを聞いている長の目は細められたまま。思い立ったように男は顔を上げると同時に「三年」と息を吐いて己の手を見た。
「連れが軍に捕らわれました。それきりです」
「一体、何が…」
 長の声に始めて焦燥が混在した。滅多に聞く事の無いそれにイルトとアムリは顔を合わせる。何か大変な事が話されているようだが、二人以外にその意味を知る者がこの部屋には他にいない。
 ふと、男の視線が長から外れた。鳶色の瞳が長の背後を一巡する。
「………」
 一瞬、それがイルトの視線とかち合い止まるが、すぐに逸らされた。一様に己を見つめる奇異な視線達に、グレンは軽く苦笑して再び長老を見やり、
「我侭を申して申し訳ありませんが、色々とお話する前に行きたい場所があるのです」
と、ゆっくりとした動きで立ち上がった。
「行きたい所?」
 長は男の言葉をそのままに返すが、ある程度の見当はついているようで同時に頷き返していた。
「防人墓苑へ」
 グレリオの防人墓苑。それはこのグレリオの住人のみが知る古代墓苑だ。村人の間でも、年に一度行われる鎮魂の儀祭の時期以外に立ち寄る機会は無い。いかに国の重鎮であろうと、これを知る理由はないはずだった。この土地に生を受け、この土地に生きた人間でない限り。
「何のために…?」
 男の言葉に反応を見せたのは、イルト。長が諌めかける様子を寸時だけ見せるが、さし伸ばされかけた手はすぐに下ろされた。
 再び男の視線がイルトに戻る。瞳に宿る光は、静かに沈んでいた。
「貴方が長殿のお孫さんであるなら、ライズ・グレリオ・サイファは君のお父上ですね」
「え…」
「私は彼に逢いたいのです。墓苑にいる筈のライズに」
 グレンの瞳に追憶の靄が漂った。
「!!…何なんだあんたは…!」
 無性に腹立たしさが込み上げ、イルトの声が荒くなる。このグレンと名乗る男が口にした名は確かに自分らが幼い頃に死んだ父親のそれであり、墓苑に葬られているのもまた事実である。だからこそ、許せなかったのかもしれない。
「イルト…!」
 前に踏み出しかけたイルトの腕をとるアムリ。英雄と同じ名を名乗る男は僅かに首を傾げた。眉目に微かに曇りが浮かんでおり、イルトが向ける感情の矛先が全て受け流されているような空虚がそこにあった。
「確かに父さんは昔に死んで今は墓苑に墓石がある…でも何であんたがそこまで知ってるんだ」
「イルトってば、やめなさい」
「姉さん、だっておかしいじゃないか…!爺様、今までの話も、何の事だか俺達には全く分からない。それ以前に、この男が誰でどうしてどうやってここに来て何でこの村の人間にしか知り得ない事まで知ってて先々代様まで知っていて…父さんや爺様の昔まで知ってるってそれも訳分からないんだよ!」
 アムリの手を振り切りイルトは長の前に立ちはだかるようにして身を乗り出していた。すでにイルトの口からは、「長」ではなく、幼少の頃から呼びなれている呼称がこぼれていた。十八の成人の儀以来、口にする事を厳しく窘められて来た呼称だった。
 ちなみにアリタスでは、男女ともに十八になると「成人」とされている。これは国ごとに異なり、一般的には二十歳である場合が多いという。
「私が何故グレリオに詳しいかについての理由は簡単で、」
 イルトの息が落ち着きだしたのを見て、男が答えた。
「私が元はグレリオの人間だからです」
「でも」
「ただ、いまグレリオにいらっしゃる方々の内、私がここにいた時期に同じくここにいらしたのは…長殿だけでしたね。だから皆さんが私をご存じないのは当然なのです」
 この村出身者ならば、イルトらが見知らぬ筈はない。その疑問を予測してか、グレンの言葉がイルトの反論しかけた言葉を覆う形になる。だがそれは、言葉の理屈は正しいのだろうが、事実の理解として反芻するにはあまりに奇異なものだった。
「…………え??」
 この男と話していると、自分の頭が悪いのではないかと疑うほどに、イルトらには彼の言葉がまったく理解の範囲を超えたものばかりなのだ。イルトは無意識に片手で頭を軽く掻き、さすがに寛容な性格の姉、アムリも困惑した表情を浮かべて口元に手を当てていた。
 周囲の心情を察してか、男は小さく苦みが混ざった笑みを見せた。
「グレリオの方々には…いずれ知って頂きたいのです。でも、今はその時ではありません」
 男の言葉の直後、長もゆらりとした動作で立ち上がる。白い長衣が長い衣擦れ音をたてた。
「私にしばらく時間を頂けませんか」
「時間…」
「私はグレリオの地なくしては生きることができない身です。お話しする義務があります。けれど、時間が必要なのです。私はすでに三年を無駄に失ってしまったから」
「グレリオなくしては……」
 最後の言葉を反芻したのは、アムリだった。グレリオの世継ぎを司る印を身に宿した彼女には、「グレリオなくしては生きられぬ身」という彼の言葉に特別な感慨を抱いたのだろう。
だがいずれにしろ男が口を開くたびに、こちらが疑問を投げかけるたびに、更なる疑問符が積み重ねられていくだけであると判断せざるを得なかった。それきり、誰もが口を噤む。
 一瞬おとずれた静寂を和らげたのは、
「墓苑に参りましょう」
と、長だった。
「恐らくそこで一つ、分かることがあるのではないですかな。この子らにとって」
「分かることが?」
 男、グレン・イーザーは小さく頷いた。

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押印師ACT5-1
ACT5 流浪する花

01
 国営バスや路面電車は、いつでも混雑している。最もそれが顕著なのが、ACCと郊外を結ぶターミナル駅への接続線だ。市内中心部ではピーク時に五分置きにやってくるのだが、市内から郊外へ向かう線の数は逆に比べて若干少ない。そのために、平日の午前中といえども、人と人とか触れ合いそうな程度には混雑する。
 午前十一時。通勤や通学による混雑もすっかりなくなった時間帯、ACCと東地区を結ぶ列車が発着するターミナル駅に一台のバスが到着した。大小さまざまな荷物を持った様々な風貌の乗客たちがバスから吐き出されるように降り立ち、その中に小さな二つの人影もあった。
「ふー、息苦しかったぁ」
 そう停留所のポスト付近で大きく伸びをするのは小柄な少女だった。おさげに結わえた髪が体の動きにあわせてコミカルに動く。小さな背中が隠れる程よい大きさのリュックを背負っていた。
「いいお天気ですね!」
 おさげの少女より少し遅れてバスを降り立った、こちらも小柄な少女。肩から鞄をかけており、鍔のひろい帽子を目深に被っている。おさげの少女の倍はありそうな長く黒い髪の毛を後ろで束ね、こちらも体の動きにあわせて漣のように揺れた。
 おさげの少女はエルリオ・グレンデール。黒く染めた長い髪の少女は、ミリアム。
 そしてエルリオのリュックにつめこまれている荷物の一つが、キューだった。今頃はリュックの底でふてくされているのだろう。
 次の列車の発車時刻が迫っていた。二人はチケットを握り締めて足早にホームへと駆け出す。傍から見れば、幼い姉妹が田舎に遊びに行く、そんな光景にしか見えないであろう。誰が片や亡国の末裔で、片や闇の押印師であると思えようか。
 何も知らぬ乗客たちと、二人の少女を乗せた長距離鉄道が発車の時刻を向かえ、長い長いプラットホームから滑り出していく。平日の昼。都心から郊外へと向かう長距離列車は空いていた。少女二人は向かい合って座り、お互いの荷物を脇の座席に置いてようやく一息ついた。
「窓、開けてもいい?」
 額にじんわりと汗を浮かべたエルリオ。同じようにまだ荒い息をついているミリアムが嬉しそうに頷いた。急に開けた景色から吹き込んでくる風は温かな午睡の陽気のようだ。窓から見える景色は、トンネルを一つ抜けたところで急に田畑が敷き詰められた田舎の風景に変わっていた。
 ようやく、「旅に出た」という実感がわいてくる。
 アパートは、引き払ってきた。元々、偽名と偽装身分証を使って借りていた住まいだ。捨てるのも簡単だった。長い旅になるであろう事は想像できたし、状況によっては二度と戻る事は出来ない可能性も考えておかねばならなかった。それは「覚悟」として。
 軍が追う「鍵」。
それを手中に収めた事は、エルリオにとってこれ以上ない幸運だった。しかもそれが、得意とする「精霊の印」であること。これを自ら解明し、利用してやる事で軍に打撃を与えられるかもしれない。
 ピルケースを開けた瞬間から、急に目の前に道が開けた気がした。非常に単純明快な公式が音を立てながら組み立てられていく様が脳裏に浮かんだ。
 世界を破滅させる可能性を秘めているという、強大な印。軍の元研究員でもあった父の所蔵や資料に何一つ手がかりらしき事を見つけられなかったのだから、軍でも恐らくその詳細を掌握してはいないだろうと、エルリオは踏んでいる。
「印はね」
「ん?」
 エルリオの口からぽつりと言葉が漏れる。窓枠に両手をかけていたミリアムは姿勢を戻した。
「形が複雑であればあるほど、原始に近いんだって」
 先述したように、印は同じ系統の中で幾重にも種類が派生しており、そのルーツは非常に根深いものがある。ピルケースに入ったあの印は、これまでエルリオが見てきた数多の印の中でもっとも複雑なものだった事から、「印」についてのルーツを探るのが先決と考えたのだ。
「そうなんですか、逆かと思っていました」
「精霊の印はね、軍事の実用化を皮切りに非公認押印師の暗躍により民間レベルにまで広がった。印に関する資料は焚書も含めて山とあるんだけど、でも概してその起源や、そもそも印とは何か、その存在について記したものは少ないの。みんなそんな事には興味がないんだ。お金になるのは実用だけだしね。」
「……その中でも特に…なのは、やはり軍需なのですよね、きっと」
「……」
 哀れみにも似たミリアムの静かな声。一呼吸置いて「そうだね」とエルリオが応える。
「実際、お父さんの資料の中にもそれらしい物は何もなかった。お父さんも結局最初は、軍つきの研究者だったから…ね」
「でも」とエルリオの言葉が続く。声調に陰は見られず、静かながらむしろ揚々としており、ミリアムは安堵の息を一つ吐いた。
「でもね、お父さんの書棚にあった古典神話の一節に、印の始まりじゃないかと見えるのがあるの。
『世界は始め、一枚の紙だった。創世神は筆をもつとそこに五つの大陸を描き、それぞれにことなる模様を描いた。それが最初の命となり、それぞれが大陸の長と定められた。創世神はそれぞれに筆の毛を分け与え、それぞれの長はその毛で筆を作った。その筆で五人の長たちは白紙の神に次々と文字や絵を描き、それらが民となり、獣となり、山河となり、村となり、国となった。』
…ってね。」
「その筆で描かれた模様が、印?」
「そう。だからきっと、今現在、幾万とある印が元はたった五つの印から始まったんじゃないか…ってわけ。」
「………五つの模様…五つの大陸と長…」
 胸元に隠したペンダント状のピルケース。そこにミリアムはそっと指先を添える。服生地の下に固い感触。押すと、肌に冷たい感覚が伝わった。
「あれが世界の運命を左右するほどの物であるという言葉と照らし合わせると、つじつまが合いそうですね」
「命に代えても軍からそれを守ろうとして亡くなった人間もいる…」
 その事実を、忘れられない、決して忘れてはならない。
 窓から吹き込んでくる風が強い草の匂いを運んできた。視線を窓ガラスの向こうに戻す。景色は変わらず敷き詰められた田畑のまま。あぜ道の人影が一瞬のうちに後方へと流れていく。次々と流去って行く、決して手の届かない景色たち。
 二度と取り戻せない過去と似ていた。
「……」
 少女二人の口がつぐまれ、会話が止まる。規則正しく足元からの鼓動音。閑散とした車内の微かなざわめきや、あちこちで開けられた窓から飛び込んでくる牧歌的な香り。
 車内は、静かだった。



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